研究課題/領域番号 |
24730501
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
白神 敬介 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺予防総合対策センター, 研究員 (20598635)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 児童相談所 / 自殺 / メンタルヘルス / 自死遺児 |
研究概要 |
2012年度においては、調査研究実施にかかる資料の収集と専門家との意見交換を行い、児童相談所に関連する自殺関連問題のレビューと次年度実施予定の調査票の作成を行った。 当初の研究計画は3年間で以下の3点を明らかにする予定であった。1相談対象となる児童の保護者が抱えているメンタルヘルスの問題の内訳、2児童相談所がメンタルヘルスの問題を共有するうえで適切な連携先、3児童相談所が適切に他機関と連携するためのネットワークの在り方。この1と2を明らかにするためには、実態調査が必要であり、そのためのプロトコルについて本年度検討が進められ、具体的にいくつかの課題が明確となった。まず、児童相談所では自死遺児への支援が手薄である現状があり、児童相談所で利用可能な資材等の開発が求められている現状がある。この点は児童相談所における自殺関連問題を扱う上では重要な課題であり、検討事項として追加することとした。また、児童相談所は保健分野との連携に課題があることが明らかとなった。保健分野との連携の実態については調査により具体的に示すとともに、連携に関する事例の収集が本研究で果たすべき課題であると考えられた。以上の明らかとなった点は、児童相談所の専門性を補強するうえで重要な課題であり、児童相談所が自殺関連問題に果たし得る役割を明確化することにつながったといえる。 また、調査実施準備の進展として、以上の成果を踏まえて調査計画を修正し、倫理審査への申請を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
児童相談所を対象とした自殺関連行動に関する調査を実施するための準備を進めるなかで、実施可能性を検討し、なおかつ個人情報保護などの倫理的配慮をクリアするために予想よりも時間がかかった。実施可能性の検討については、児童相談所所長、行政職員を含む有識者との検討を行うことで、具体的な検討が進み、研究の社会的意義についても確認がなされた。一方で、児童相談所は昨今の児童虐待への対応から、普段業務が多忙を極め、調査への協力は非常に得られにくい状況にあることがわかった。ゆえに、いかにして社会的意義を共有し、調査協力率を高めるかについて時間をかけて検討することとなった。また、調査の内容が自殺に関するものであるため、その扱いに非常に慎重になる必要性が指摘された。当研究計画を主任研究者の所属する施設の倫理審査に申請したが、一度は審査を通過することが困難となったため、改めて研究計画の練り直しが必要となった。こうした調査実施に関する整備のために十分な検討を行ったため、当初の予定よりも「やや遅れている」状況となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は全国の児童相談所を対象とした調査を実施するとともにその結果の分析を報告について準備を進める。調査内容は、児童相談所の利用者について各施設が把握している自殺関連行動の実態であり、これまでに行われた専門家との検討を踏まえ、実施可能性は十分に高い。この調査により児童相談所が自殺対策を行う上での課題が明確になると考えられる。 同時に、児童相談所と保健分野との連携についての事例を収集するため、児童相談所スタッフへの聞き取りをいくつかのフィールドで行うことを予定している。聞き取り内容は、児童相談所が利用可能な医療保険福祉的資源を中心としたものとなる。聞き取りによって収集した情報は調査で把握された課題についての解決策を検討する手がかりを得ることになると考えられる。 これらの調査を実施することで得られた成果については学会等で報告を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に調査のための印刷・郵送費、データ入力委託費用、ヒアリングのための旅費、学会発表参加費用に充てられる。なお、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため24年度の研究費にわずかに未使用額が生じたが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
|