平成26年度は高齢者の生活支援の歴史と現状に関して、日英両国の生活支援サービスの変遷に関する歴史資料の読解・比較検討、現代の日本で生活支援サービスの提供に携わる団体やボランティア活動に従事する高齢者へのインタビュー調査とその分析を行った。 まず、歴史分析において、日本については、高齢者の悩みごと相談、家庭奉仕員事業、老人クラブなど、高齢者福祉に関連した地域史資料や社会福祉協議会が実施した調査報告書の収集を引き続き行った。家事援助や食事サービス、移動サービスなど、生活支援は市民の主体性にもとづいて地域に密着して運営され、公的な社会福祉サービスを補完する形で発展してきたことを整理した。他方、英国については、1950年代から1990年代初頭までのホームヘルプと配食サービスについて、地方自治体別の受給者数、従事者数、給付総額等についての統計データを整理し、慈善団体・非営利組織による高齢者への見守りや家庭訪問、デイセンターの運営などに関する歴史資料と照らし合わせて検討を行った。 現代日本の現状分析では、東京近郊で生活支援サービスを提供する団体やそこでボランティア活動に従事する高齢者にインタビュー調査を行った。調査の結果、ボランティアによる支援は、専門職だけでは提供しきれない生活の質の向上に貢献していると同時に、行政がそのようなボランティア活動を支援することを通じて、地域の組織化や予防的な活動が実現されうることが示唆された。以上の中間的な成果については内外の学会で報告を行い、論文の作成を進めているところである。
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