本研究課題は、自己情報へのプライバシー意識が迷惑行為被害に与える影響を心理学的観点から検証することを目的としている。自己情報を必要以上に公開すると、見知らぬ者から連絡を受けるといった迷惑行為被害を受けやすくなると想定される。このような迷惑行為被害は、詐欺などの犯罪被害につながる可能性もあるため、迷惑行為被害を未然に防ぐための方策が必要となる。 平成25年度は、自己情報へのプライバシー意識が低いと、自己情報を未知の他者に公開しやすいか否かを、実際の行動を測定する実験的手法により検証した。その際、相手とのその後の関係が予期される場合とされない場合を設定し、未知の他者への自己情報公開を規定する要因に違いがみられるか否かを検討した。大学生の実験参加者を対象に、他大学の学生と10分間、パソコンでチャットしてもらう旨を説明した。そして、チャット前に、パソコン画面上で相手に示すプロフィールを作成してもらうと告げ、示したい情報のみ入力するように求めた。関係予期高条件では、相手と後日、実際に会ってもらう予定であると教示した。低条件では、上記の教示は行わなかった。最後に、ネット上での情報プライバシー(自己情報を他者に伝達しようと思う程度)、相手とのコミュニケーション期待に関する項目などに回答するように求めた。分析の結果、関係予期によって、未知の他者への自己情報公開を規定する要因に違いがみられた。すなわち、低条件では、識別情報(名前などの、自分を特定できる情報)へのプライバシーが低いほど情報入力数が多かった。したがって、相手との関係予期がないと、自分を特定できる情報にプライバシーを感じないほど未知の他者に自己の情報を公開しやすいと解釈される。一方、高条件では、コミュニケーション期待が高いほど情報入力数が多かった。したがって、相手との関係予期があると、情報プライバシーの影響が弱まると解釈される。
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