平成24年度は以下の2種類の実験を実施し,また1種類の実験を継続中である。本研究の目的は,ダイエットという自己制御文脈における心理プロセスを解明し,その有効な解決方略を提言することである。一般的に,ダイエットがうまくおこなえないのは目標と誘惑との葛藤を解決できないため,といわれる。しかし,本研究で注目しているのは(むしろ逆に)ダイエットがうまくできない者は,目標と誘惑との葛藤を知覚できていないのではないか,ということである。 この仮説を検討するため,平成24年度は2種類の実験を行った。1つは,BMIと(心理的)食べ物に対する接近・回避傾向の関連を検討した。またもう1つは,BMIと誘惑物(例. お菓子)を我慢する際のストレス指標との関連を検討した。いずれの実験からも示唆されることは,BMIが低い人ほど(すなわち,ダイエットがうまく出来ている人ほど),ダイエット目標とそれを妨げる誘惑との葛藤を感じているということである(例えば,後者の実験では,BMIが低い人ほど,お菓子を我慢しなければいけないと伝えられたときにストレスが高まっていた)。先述のように,ダイエットがうまくできないのは,一般に,目標と誘惑との葛藤を解決できないためと言われることが多いが,本研究の結果から示唆されることは,むしろ,そういう人は葛藤が知覚できていないということである。 この研究結果にもとづき,目標と誘惑との心理的葛藤を強めることで,ダイエットがうまくできるようになるか,という研究を現在進行中である。
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