研究課題/領域番号 |
24730517
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
林 幹也 明星大学, 人文学部, 准教授 (80435081)
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キーワード | 社会心理学 / 態度 / 態度形成 / 評価的条件づけ / 学習 / 潜在的態度 / 自己制御 |
研究概要 |
情動的に中性的な刺激の呈示に続いて、快あるいは不快な情動価を有する刺激を対呈示する手続きを繰り返すと、情動的に中性的な刺激(条件刺激)に対する実験参加者の態度が、対呈示された刺激の情動価と同方向に変化する。このような実験手続きを評価的条件づけと呼ぶ。 当該年度においては、性格特性として楽観的な参加者と、悲観的な参加者が、これらの手続きにおいて、情動刺激に対して異なる方向の態度を形成することを明らかにした。実験では、性格特性としての楽観性を測定する尺度を実施してスクリーニングを行うことにより、参加者を楽観主義者と悲観主義者に分類した。これらの参加者に対して、ある条件刺激の直後に必ず快語を、べつの条件刺激の直後に必ず不快語を対呈示する学習フェイズを実施した。この学習フェイズでは、いずれの群の参加者も、条件刺激と情動語の関係に気付くことのないよう、認知資源を制限するための認知不可課題を同時に課した。学習フェイズ終了後の獲得フェイズでは、2つの条件刺激とフィラー刺激を次々に呈示し、これらに対する態度を2肢選択課題によって測定した。その結果、悲観主義者は、対呈示通りの態度を形成した。すなわち、快語の直前に呈示された条件刺激を好み、不快語の直前に呈示された条件刺激を嫌うとの反応を示した。これに対して楽観主義者はこれとは逆に、快語の直前に呈示された条件刺激を嫌い、不快語の直前に呈示された条件刺激を好むとの反応を示した。以上の結果は、単純な対呈示による態度形成において、楽観主義者が環境からの入力を逆転させる自動的態度形成を行っていることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において、事前に予想しなかった新たな知見が得られたため、事前の計画を若干変更することとなった。しかしながら、得られた成果は前例のないものであり、事前の予想を超えるものであった。そのため、全体的に見て、おおむね順調に推移していると考えて良いであろう。
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今後の研究の推進方策 |
事前の計画通り、態度形成における意図的情報探索の効果を明らかにするための実験を継続する。しかしながら、当該年度に得られた知見に基づき、態度形成に自動的成分においては、参加者の楽観性特性の影響力を考慮した分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の研究において、意図しなかった新しい発見が得られたため、それを確証するために、実験のやり方を一部変更したためである。数少ない参加者に対して条件を変更しながら効果の確証を行ったため、十分な参加者数を投入できなかった。 意図しなかった発見も含めて、当初の計画通りに研究を進める。参加者投入数が少なかったため、購入しなかった実験用消耗品を購入しなければならないため、次年度使用額の消費が必要である。
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