最終年度である今年度は、前年度から継続している、非協調的なコミュニケーションの日本・中国間比較実験を実施した。昨年度は、中国遼寧省で中国人を対象に実験したのに対して、今年度は、日本の関西で日本人を対象にして実験を実施した。 今年度に実施した具体的な実験内容は以下の通りである。実験参加者は、日本人大学生の未知関係20組40名、友人関係23組86名で、非協調的で情緒志向的な「葛藤話題」と、非協調的で課題志向的な「競争話題」に取り組むように求めた。「葛藤話題」では、行動的役割演技法を用いて模擬的に葛藤状況を作り出し、コミュニケーションを行った。「競争話題」では、社会的な問題について賛成・反対の立場に分かれて議論し、相手を説得するように求めた。条件間のカウンターバランスをとって、実験参加者は両条件に参加した。会話の様子はビデオカメラで撮影した。会話の前後に質問項目に回答するように求めた。質問項目は、自己呈示動機、対人コミュニケーション認知、感情状態、葛藤対処行動などである。ストップ・ディスタンス法でパーソナル・スペースも測定した。ディブリーフィングを行い、実験を終了した。実験後、質問紙データはデータ入力を行い、撮影した会話の音声映像は、発話・笑顔・うなずき・視線の生起時間と頻度をコーダー2名が定量化した。前年度の中国人を対象にした、非協調的コミュニケーション実験の結果と比較し、両者の共通点と相違点を明確化した。 さらに、昨年度までに実験を実施し、発話内容を文字起こししていた、日本人と中国人の協調的なコミュニケーションについて、評定結果の分析を進めて学会発表を行った。討論において、中国人は日本人に比べて意見や主張を直接的に表現し、幅広い考えを述べ、互いの意見を対立させていた。日本人は親和的な感情を直接的に表現するが、意見や主張は直接的に表現せず、意見や考えの対立を避けていた。
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