研究課題/領域番号 |
24730529
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
一柳 智紀 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30612874)
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キーワード | リヴォイシング / 課題構造 / 小グループ / 協同学習 / 思考の外化 |
研究概要 |
第1に、課題構造の相違が小グループでの問題解決過程における学習者によるリヴォイシングの機能に及ぼす影響を明らかにするために、大学生を対象に、正解が一義に決まる良定義課題と,正解が一義に決まらない不良定義課題の2題を4人1組で取り組む実験状況を設定し、その過程を検討した。その結果、良定義課題において学習者は,他者の考えに対してわからないところを尋ねる際や,そうした問いかけに応じて説明する際にリヴォイシングを行い,より精緻な理解を形成していることがうかがえた。他方,不良定義課題において学習者は,他者の考えを自分の既有知識やより日常的で具体的な言葉に言い換えたり,繰り返すことで同意を示す際にリヴォイシングを用いることで,自分なりに他者の考えを受容していることが示された。 第2に、思考の外化を促す道具としてのワークシート(WS)の配布方法が,小グループでの問題解決過程における学習者によるリヴォイシングを含めたコミュニケーションに及ぼす影響を明らかにするために、WSをグループで1つ配布する【単一配布群】と,学習者各自に配布する【各自配布群】の2群を設定し,大学生4人1組が良定義課題に取り組む過程を質的に検討した。結果,【単一配布群】ではWSが共有スペースとして利用され,ある学習者が外化した内容に上書きしていくことでグループとしての理解が形成されていた。一方,【各自配布群】ではWSは個人スペースとして利用され,共同注意やシート・身体を中心に寄せることで共有スペース化し,そこに外化された思考について議論し,自分なりの理解を新たに自分のシートに外化していた。ここから,WSの配布方法により,学習者の協同過程およびWSの使用方法,形成される理解の意味が異なることがうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、平成25年度は前年度に分析を行ったペアや小グループでの協同学習における,課題構造の相違によるリヴォイシングの機能の相違について学会発表を行った。さらに、あらたに良定義課題における思考の外化を促す道具としてのワークシート(WS)の配布方法が,小グループでの問題解決過程における学習者によるリヴォイシングを含めたコミュニケーションに及ぼす影響を検討するために大学生を対象とした協同学習場面を設定した実験を行い、データを収集することができた。さらには、その内容について分析を行い、学会発表を行った。くわえて、実際の授業場面における教師のリヴォイシングおよび小グループでの問題解決時の学習者によるリヴォイシングのデータについても順次収集している。 以上のことから、おおむね順調に進展していると捉えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、思考の外化を促す道具としてのワークシート(WS)の配布方法が,小グループでの問題解決過程における学習者によるリヴォイシングを含めたコミュニケーションに及ぼす影響について、より詳細な検討を行い、海外学会で発表予定である。 次に、課題構造の相違による思考の外化を促す道具としてのワークシート(WS)の使用方法の相違を検討するために、大学生を対象とした協同学習場面を設定した実験を行い、データを収集する。これらを分析し、学会にて発表を行う。 最後に、昨年度から継続して、協力校において観察およびインタビュー調査を行い、学級全体での話し合いを中心とした授業において,教師によるリヴォイシング方法やその機能の時間的な変化を明らかにするための十分なデータを収集する。これについても、データを分析し、学会にて発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の残額である次年度使用額(67,124円)については、平成25年度末にすでに執行済みである。 上述のとおり、平成25年度末にすでに執行済みであるため、使用計画は特にない。
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