本研究では、階層的線形モデル(HLM)によって単一事例実験によって得られたデータをメタ分析した場合、公表バイアスがどのような要因によってどの程度発生するかを検証した。その結果、明らかになったことは以下の3点である。(1)国内で発表された単一事例実験の効果量はいずれも大きく歪んで分布しており、公表バイアスの存在が疑われる。(2)処置前値によって対象者をスクリーニングした場合、平均への回帰によって本来は存在しない処置効果が検出されることがしばしばある。(3)統計的に有意かどうかによって公表の有無が左右されていた場合、メタ分析によって本来は効果のない処置が相当高い効果があると評価される可能性がある。
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