研究課題
教育現場で近年問題とされている学級崩壊や学力低下に対して、それらを引き起こす様々な要因が考えられており、前頭葉機能の関与が指摘されているが、それら脳機能の発達過程についてや問題行動に関与する脳機能について不明な点が多い。そのため、脳機能イメージング法や介入作業を用いて、学童期児童から成人までの注意・集中能力に関する発達と、その能力を向上させる作業を脳科学の見地から明らかにし、実際の教育現場へ成果を還元することが、本研究の目的である。脳機能への効果がみられる介入作業として、読書をすると授業に落ち着いて集中できる(渡邉・寺沢2009)ことや、”運動”と”コミュニケーション”が必要な集団運動遊びは、前頭葉機能の活発型を示す児童の比率を上げるという報告がある。このことにより、集団運動遊び(しっぽとり、S けん等)をすることで、キレる・集中できないといった現在の小学校現場が抱える問題に対する解決の可能性が期待されており(渡邉・寺沢2010)、どういった行動(遊び等)が、どのように行動に影響を与えるかを明らかにすることで、効果的な介入作業は何かを示すことが出来るようになる。そこで、いくつかの介入課題の候補となる作業課題(遊び等)の選定を行っている。その際、単独で行う作業よりも、運動とコミュニケーションの交互作用に効果がある仮説を立て、その違いをGo-Nogo課題や注意力課題(Attentional Network Test)を行なって検証・選定した。まず、成人において、安静・音読・裁縫・バランスボール・ダーツ、また、”運動”と”コミュニケーション”の交互作用課題(読書、Sけん・かぶ、1人遊び・陸上練習、話合い活動)などを設定し実験を行った。裁縫が注意力課題の成績に影響を与えることが明らかになり、今後交互作用の影響を調べることで、作業のどういった側面が効果を示すのか明らかにする。
3: やや遅れている
注意・集中に関する介入の効果を調べる行動実験を行っており、そのなかで、介入の効果が期待されるいくつかの課題を選定し、その影響を調査している。また、注意力を測る課題がどの程度児童が行うことが出来るかについて、主に小学生3-4年生の生徒を対象に行動実験を行っている。現在のところ、18名の小学生からANT(Attention Network Test)のデータを取得しており、解析を行っているところである。そして同時に、fMRIを用いて行う注意・集中に関する脳機能を調べる課題について、いくつかの予備実験を行い、実験課題を、ANT課題とResting State fMRIに絞ることが出来た。また、介入作業に関しても選定を進めているところである。
引き続き、介入効果を図る課題の脳機能計測をすすめる。そして、被験者数を増やすことで一定の結果を得ることを目指す。また、小学生から大学生までの被験者で介入課題の効果の違いを確認し、それぞれの年齢で得られる効果が同じものなのか異なるものなのかの確認も行う。さらに、今年度はこれまで得られた介入課題の行動学的結果をfMRIに組み込むデザインを用いて、どういった脳機能の変化と介入が関連しているかを明らかにする。その際に、MRI実験用にデザインされた認知課題や介入課題を用い、脳活動・脳容積・脳神経の走行について評価を行ためのパイロット実験を行う。また、これらの脳機能計測に加えて、安静時の脳機能の成長や介入と共に起こる変化についても、観察を行う。
MRIを用いた研究するに当たり、児童および成人の実験参加者の脳画像を撮影する予定であったが、規定の人数を確保することが出来なかったため、次年度使用変更が生じた。来年度の予算に組み込み、本年度に取得できなかった被験者の撮影を行う。そして、必要被験者数の確保を図る。
すべて 2014 2013
すべて 学会発表 (4件) 図書 (2件)