研究課題/領域番号 |
24730533
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 史 信州大学, 教育学部, 助教 (80608026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 問題解決スキル訓練 / 認知発達 / 対人行動 / 介入研究 / 小中学生 |
研究概要 |
平成24年度は,対人行動の改善につながる問題解決要素の学年間比較を行った。 甲信越地方の公立小中学校に在籍する小学4年生,6年生,および中学2年生計139名を対象として,通常授業時間を用いて問題解決スキル訓練を実施した。介入前後には,自己評定および教師評定による対人行動(向社会的行動,攻撃行動,引っ込み思案行動)の測定を行った。また,対人ストレス場面のビデオ映像を用いて「問題の明確化と定式化」「解決策の案出」「解決策の評価」「解決策の実施と検証」という4つの問題解決要素を児童生徒に実行させることで,問題解決の測定を行った。問題解決スキル訓練は,通常授業時間を用いて,1回50分計4回のセッションを設けて実施した。 訓練の結果,小学4年生では問題解決の4つの要素に有意な改善が認められ,小学6年生では「解決策の案出」「解決策の評価」「解決策の実施と検証」の3つ,中学2年生では「解決策の案出」のみが改善した。また,小学4年生および6年生では向社会的行動の増加と攻撃行動の減少が見られ,中学2年生では攻撃行動の減少が認められた。 次に,問題解決の変化量と対人行動の変化量を用いた相関分析を行った。その結果,小学4年生では「問題の明確化と定式化」と「解決策の案出」が対人行動の改善につながる可能性が示された。また,小学6年生および中学2年生では「解決策の案出」と「解決策の評価」の向上が対人行動の改善につながっている可能性が示唆された。 「問題の明確化と定式化」および「解決策の実施と検証」と対人行動との関連については,一貫した結果が得られなかった。これらの問題解決要素は,対人行動の変化に直接影響するというよりも,「解決策の案出」や「解決策の評価」の変化を促すことで,対人行動の改善に間接的に寄与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定どおり,問題解決の4つの要素と向社会的行動,攻撃行動,および引っ込み思案行動の変化の連動性を実験的に検討することができた。本年度の研究成果は,平成25年度に開催される諸学会にて発表申請中であり,学術誌への投稿に向けて執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,主に学校教育現場において活用される研究知見の提示を目的としたものであり,学校教員からの協力が必要不可欠である。そのため,学校教員対象の研修会等で研究知見および具体的トレーニング方法を紹介することで,研究成果を積極的に発信するとともに,研究参加希望校の募集を行う。また,学校教員および児童生徒を対象としたストレス調査を各小中学校に提案し,希望する学校にて実施する。これによって,本研究が提案するトレーニング方法に対する潜在的なニーズを把握し,各小中学校責任者と共有することで,介入を必要とする学校および学級に介入を着実に提供していく。 現時点において,研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点等は浮上していない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,92,426円分の研究費の未使用が生じた。これには大きく2つの理由がある。 第一に,研究参加校の募集が予定よりもスムーズに進んだため,国内旅費の支出が予定よりも5~6万円程度節約されたためである。 第二に,研究参加校による研究実施風景の撮影が行われたため,物品費におけるデジタルカメラ購入費用が節約されたためである。 こうした平成24年度研究費の未使用分(次年度使用額)と平成25年度分として請求済の研究費については,研究成果発表および研究参加校のさらなる拡大のための旅費および人件費を主として,研究成果発信の際に必要となる心理学関連書籍などの物品,英文校閲費などに充てる。
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