研究課題
本研究課題の目的は,アスペルガー障害をもつ児童生徒を対象とした,抑うつ予防プログラムを開発し,その有効性について検討することであった。アスペルガー障害をもつ児童生徒にとっての抑うつの問題は,アスペルガー障害の二次障害として発現し,いじめや不登校の背景の1つとなっており,アスペルガー障害をもつ児童生徒の抑うつに関わる心理社会的要因の影響性について検討し,その知見をもとに,抑うつ予防を念頭においた学校適応促進プログラムを開発し,学校現場における適用の有効性を実証的に検討していく。平成25年度は抑うつ予防プログラムを試行し,心理的介入による抑うつ低減効果を一部実証することが可能になった。また,アスペルガー障害をもつ児童生徒と,一般の児童生徒における心理的介入の有効性の差異を明らかにすることを目的として,一般の児童生徒や,アスペルガー障害以外の発達障害をもつ児童生徒,その他の心理的負荷を抱える児童生徒を対象とした心理的支援も行い,その有効性の差異について,検討することができた。具体的には,認知行動療法に基づく心理的介入は抑うつ低減効果があることが複数の実践の成果から明らかにすることが可能になったが,その中でも特に,一般の児童生徒の中で,抑うつのリスクを抱える児童生徒に対しては認知面に重きを置いたプログラムの効果が高い一方で,アスペルガー障害を含む発達障害をもつ児童生徒に対しては,社会的スキル訓練に代表される行動面に重きをおいたプログラムが有効である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題に関連した,アスペルガー障害をもつ児童生徒と,その他の発達障害をもつ児童生徒,心理的負荷を強く経験した児童生徒など,さまざまな対象の児童生徒に対して,抑うつ低減プログラムを試行することができ,一定の有効性を確認することができたことは大きな成果であると考えられる。その一方で,断片的な試行に終わり,包括的なプログラムの実施に至らなかったのは,大きな課題であるため,今後の課題として力を入れて取り組んでいく予定である。
平成26年度は,研究計画のまとめとして,これまでの研究成果を学会等で発表するとともに,包括的プログラムの実施に力を入れて,取り組んでいく。これまでの本研究課題の成果によって,さまざまな心理的負荷を抱える児童生徒に対して,認知行動療法に基づく抑うつ低減を目的としたプログラムが有効であることが明らかになりつつある。その中でも,特にアスペルガー障害をもつ児童生徒を対象として,学校現場を介入の土台として考えた時に,どのような支援が有効であるのか,ということを明確にすることが必要であると考えている。
支出を計画していた論文の抜き刷りの請求が,当該年度中に届かなかった。現在までの研究成果を公表するために,International Congress of Applied Psychologyに参加し,発表を行うことを計画している。発表演題Individual social-skills training for a child with Asperger’s syndrome and class-wide social-skills training for his classmates: Effects on adaptation behaviors and depressionとして,すでに採択されている。その参加費,旅費に研究費を用いる予定である。そのほかには,これまでの研究成果を公表するための学会参加,論文執筆に係る経費を計上している。加えて,最終的なプログラムの実施とその効果検討のための学校等との通信費,旅費,印刷費などを計上している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 図書 (2件) 備考 (1件)
認知療法研究
巻: 7 ページ: 94-102
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻: 4 ページ: 印刷中
Journal of Affective Disorders
巻: 151 ページ: 352-359
発達研究
巻: 27 ページ: 19-30
ストレス科学研究
巻: 28 ページ: 66-73
http://souran.aichi-edu.ac.jp/profile/ja.pESa4-joJb.tuvG9ow4aYA==.html