研究課題
本研究課題の目的は,アスペルガー障害をもつ児童生徒を対象とした,抑うつ予防プログラムを開発し,その有効性について検討することであった。アスペルガー障害をもつ児童生徒にとっての抑うつの問題は,アスペルガー障害の二次障害として発現し,いじめや不登校の背景の1つとなっており,アスペルガー障害をもつ児童生徒の抑うつに関わる心理社会的要因の影響性について検討した。さらに,その知見をもとに,抑うつ予防を念頭においた学校適応促進プログラムを開発し,学校現場における適用の有効性を検討した。平成26年度は,主として学校適応促進プログラムの開発とその実践を行った。1つ目の実践として,特別支援学級児童に対する個別SSTと,交流学級児童に対する集団SSTを組み合わせて実施することで,対象となる児童の社会的スキル獲得に寄与し,学級適応を促進させる効果が得られることについて明らかにした。本研究の結果,個別SSTの実施によって,交流学級における対人交流場面での行動変容が確認され,他児に対する適応的な注目獲得行動が習得された。2つめの実践として,児童に対する行動活性化に基づく心理的介入を実施することが,児童の抑うつ低減に及ぼす効果について検討した。本研究では,小学5年生と6年生の計280名を対象に,1回45分で構成される行動活性化療法に基づく介入授業を実施した。対象となった5年生と6年生の児童に共通した結果として,行動活性化に関する心理的介入を行うことが,児童の抑うつを低減させ,学校享受感を高める可能性があることが示唆された。また,介入前から介入後にかけて,行動抑制の指標であるBIS得点が低減し,行動賦活の指標であるBAS-駆動得点が増加していた。これらの手続きから,抑うつ予防を念頭においた学校適応促進プログラムの有効性と今後の課題について,総合的に検討を行った。
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