研究概要 |
本研究は、学級の社会的な目標構造が児童の学校適応および学業への動機づけに及ぼす影響を検討することである。これまでの研究では、学業面の目標構造(学級の目標構造)に関する研究が行われているものの、社会性に関する目標構造についてほとんど扱われてこなかった。 本年度は、国内外における学級環境や社会的コンピテンスに関する研究の整理を行い、学級の社会的目標構造に関する理論的枠組みを構築した。具体的には、学級風土研究(Fraser, 1998)、社会的達成目標研究(Ryan & Shim, 2006)、規範研究(Hamilton, Blumenfeld, Akoh & Miura , 1990)を理論的基盤とした。その結果、本研究では、学級の社会的目標構造について、教師が児童に対して強調する社会性に関するメッセージと定義し、同じ社会性についても伝え方が異なると得られる結果も異なるという理論的枠組みを考案した。具体的には、社会性に関するメッセージには、接近的な伝え方(~しよう)と回避的・義務的(~するな)な伝え方が存在すると考えられる。これら接近・回避の次元は、規範研究など児童の社会性の研究においても取り上げられてきた枠組みである。本研究では、学級レベルに応用するところに独自性があると考えられる。 現在、この理論的枠組みを基に、教員を対象としたデータ収集中である。また、児童対象とした質問紙調査に向けた調整と準備を行っている。
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