研究課題/領域番号 |
24730537
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
林 創 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80437178)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 認知発達 / 幼児期 / 児童期 |
研究概要 |
本研究は,子どもを対象に「状況に応じた欺きと道徳判断」に着目し,その発達過程を「心の理論」や「実行機能」と関連づけながら,個別実験による実証的方法で解き明かすことを目的とするものである。平成24年度は,幼児期と児童期の子どもを対象にした研究から,以下の2つのことを検討することができた。 第1に,幼児期の子どもを対象に,「通常の欺き」課題とともに「状況に応じた欺き」が求められる課題を用意し,実験を行った。その結果,心の理論の発達とともに,「通常の欺き」は幼児期の終わり頃に正答できるように対して,「状況に応じた欺き」は幼児期には難しく,「通常の欺き」よりも年齢的に後に達成されることが考察された。また,欺きを調べる課題の成績と実行機能に関する課題の成績との間に相関も見られた。 第2に,児童期の子どもを対象に,悪意のないうそ(white lie)の理解に着目した調査を行った。その結果,小学校低学年では,悪意のないうその理解がまだ難しく,実際の感情をそのまま選んでしまう回答が多かった。しかし,中学年以降では,実際のネガティブな感情を抑制して,ポジティブな発話を選ぶ割合が増加した。また,高学年になると,状況に応じて選ぶ発話を選択する傾向が見られた。これらの課題の成績と,心の理論の発達を調べる課題の成績との間に関連が見られた。 これらを踏まえると,幼児期に心の理論の基礎が成立するが,児童期に心の理論がさらに洗練されて,社会性が身についていくことが明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた状況に応じた欺きの発達について,主として児童期を対象にデータを収集でき,論文にまとめる準備ができたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「おおむね順調に進展している」と判断されたものの,今後も欺きや道徳的判断の発達について,引き続き調査をすることで,子どもの社会性の認知発達の豊かさについて,さらに明らかにしていきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行する上で必要となる物品や書籍の購入に使用するまた,研究成果の発表に要する旅費としても使用する。さらに,実験課題の作成や実験データの入力の補助者に対して謝金が必要となる他,得られた結果を英語の学術論文にまとめる際や国際学会での発表に備えるために,英文校閲業者に英文をチェックしていただくための謝金としても使用する見込みである。
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