本研究の目的は、やりとりを通して知識獲得が促されていく過程における他者の存在の意味をやりとりの有り様を詳細に分析していくことで、明確にしていくことであった。この目的に従い、保育園児(4歳児)を実験参加者として、とても仲の良い園児同士のペア、普通の仲の良さの園児同士のペアというように、やりとりする相手との関係性を異ならせたペアを作り、そのペアでやりとりを行わせ、その後、ペアでやりとりした際に用いた課題と同じ課題を単独で行わせた。その結果、予想とは異なり、普通の仲の良さのペアの方がやりとりした結果による知識獲得の程度が高かった。これは、仲が良すぎると、相手にとって適切なレベルを超えた援助を行ってしまったり、仲が良いがために当該のやりとりに集中できなくなってしまうように、親密性の異なりによるやりとりの異なりが影響していると考えられる。このことは、4歳児といった他者視点取得能力等の力を獲得しつつある者においてのみみられる現象なのか否かは今後の詳細な調査を行っていかないと明確にならないが、これまで行われた他の研究とは異なり、仲の良さがそのまま知識獲得に結び付くわけではないということを示した点におていは、本研究は意義があったといえよう。また、この研究の結果から、学校等でやりとりを行わせ、理解を深めていくといったことが良く行われているが、そのやりとりをより効果的にするためのグループの組み方等に対する一助も与えられることになった。
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