本研究の目的は、2歳児の表象機能の発達及び自己の様相に関する発達モデルを構築することである。本研究では、モデル構築を進めるにあたり、二つの観察研究(一児の発話使用に関する事例研究と2歳児クラスの自由あそび場面の観察研究)を行った。第一の研究では、2歳児1名の言語使用に着目し、2歳から3歳にかけての認識世界と対他関係の特徴を検討した。第二の研究では、自由あそび場面での観察を通して、仲間同士の関係性やあそび方の特徴を検討した。第一に関しては、既に平成27年度に論文としてまとめ、国内学会でも発表している。 今年度は、2歳児クラスのあそび場面での子ども同士の相互作用に関する観察事例の分析を進めた。本研究では、2歳児クラスの後半に観察された「言葉での約束事を含む模倣」に着目し、その発達的意味を考察することを主な目的とした。約束事を含む模倣は、①他者への要請や宣言を伴う模倣、②教える発話を伴う模倣、③言葉あそび、の三つに分類された。約束事を含む模倣では、子どもが他児との間で「(◯◯というやり方で)△△しよう」といった共有目標(joint goal)を作り出している点に特徴があると考えられた。これらは、Tomasello(2014)が述べる3歳児の特徴にも合致しており、本研究では、3歳~3歳半前後を「「joint goal」を共有する存在として、「わたし」と「あなた」を強く意識するようになる発達的時期」として考察した。この研究成果は、主に平成28年度の発達心理学会で発表している。
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