研究課題/領域番号 |
24730542
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
青木 直子 藤女子大学, 人間生活学部, 講師 (20453251)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 動機づけ / ほめ / 承認欲求 |
研究概要 |
子どもの動機づけは,ほめられることによって変化する。しかし,すぐ達成できた活動をほめられた場合と達成までに時間がかかった活動をほめられた場合では,同じほめ方をされても,その後の動機づけは異なると考えられる。また,よくほめてくれる人物とあまりほめてくれない人物からほめられた場合を比較しても,同じほめ方であっても,その後の動機づけには差異がみられることが予想される。 このように,ほめられる以前におけるのちにほめられることになる活動やのちのほめ手などに対する認知は,ほめられた後の動機づけに影響をもたらすと考えられる。しかし,これまでの研究は,どのようなほめ方であれば動機づけが高まるかというほめる瞬間のことがらに焦点づけたものが多い。そこで本研究では,ほめられる以前の認知がほめられる経験に与える影響について検討していく。 平成24年度は,小学校1~3年生を対象とした以下の調査を行った。 A.インタビューデータの整理:これまでに行ったインタビューデータを利用し,ほめられたエピソードを語る際に言及されるほめられる以前の状況・意識について整理した。その結果,子どもたちは,ほめられる以前の段階で,のちにほめられることになる活動が好きか嫌いか,得意か苦手か,ほめ手がよくほめてくれるかあまりほめてくれないかといったことがらを意識していることが明らかになった。 B.質問紙調査:Aで言及されることの多かったほめられる以前の状況・意識を用いた質問紙調査を行った。この調査は,異なるほめられる以前の状況・意識を対にして提示し,どちらがより動機づけが高まると思うかをたずねるものである。調査の結果,前から嫌いなことよりも好きなことをほめられたとき,いつもほめられていることよりもいつもはほめられないことをほめられたとき,簡単なことよりも難しいことをほめられたときなどに動機づけが高まることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,交付申請書に記載した2つの調査を実施することができた。このことから,おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に行った調査により,子どもがほめられる以前においてどのように認知していれば,ほめられた後の動機づけが高まるのかを明らかにすることができた。しかし,この調査は「簡単なことをほめられる場合と難しいことをほめられる場合では,どちらの方が動機づけが高まるか」「好きなことをほめられる場合と嫌いなことをほめられる場合ではどちらの方が動機づけが高まるか」といった方法で行われたものである。つまり,1つの比較対の中に含まれるほめられる以前の認知は,「簡単-難しい」という対であれば活動の難易度,「好き-嫌い」という対であれば活動に対する好悪など,1要素ずつとなっている。 しかし,子どもはのちにほめられることになる活動に対して「簡単-難しい」という要素だけでなく,「好き-嫌い」「得意-不得意」といった要素も同時に認知していると考えられる。また,動機づけが高まると評定された要素を複数組み合わせると動機づけが低下したり,動機づけを低めると評定された要素であっても特定の要素と組み合わせると動機づけを高める働きをもつなど,ほめられる以前の認知間の相乗効果・相殺効果もあることが予想される。 これらのことから,今後は,「嫌いだが簡単なことをほめられる場合と好きだが簡単なことをほめられる場合ではどちらの方が動機づけが高まるか」というように,ほめられる以前の認知を複数組み合わせた調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の一部は,予定よりも資料整理のための時間が短縮でき,人件費がかからなかったなどの理由により,次年度に使用することになった。平成24年度の残額も含めた研究費は,調査の際に必要なプロジェクタなどの物品の購入・調査や学会参加のための旅費・報告書の印刷などに使用する予定である。
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