研究課題/領域番号 |
24730543
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
河野 理恵 目白大学, 人間学部, 准教授 (40383327)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者 / 記憶モニタリング / 自己高揚的評価 |
研究概要 |
本研究は,高齢者における記憶能力のモニタリングに関する研究を主軸としている。 そのうち,平成24年度は,高齢者における記憶の自己高揚的評価が生じる状況を確認し,そのような評価に関係する要因を明示した上で,記憶に対するポジティブな自己評価の発現機序を明らかにすることが目的であった。そこで,高齢者312人(男性163人,女性149人)を対象に質問紙の調査を実施した。平均年齢は69.46歳であった。なお,本研究では子どもとは同居していない一人暮らしの高齢者のみを対象とした。 調査項目は,調査対象者に関するフェースシート,自己の記憶に関する評価,自己の健康に関する項目,自己の社会的活動に関する項目,病気に対する考え方,ライフサイクルなどで構成した。 結果として,自己の記憶に関する評価において,ほとんどの高齢者が「1年前よりも自分の記憶は衰えた」と評価したものの,「同じ年の他の人と比べて記憶は衰えている方である」との回答は少なく,「同じ年の他の人と比べて自分の記憶は優れている」との回答が多かった。このことから,これまでの研究と同様に,記憶の自己高揚的評価は,同じ年の他者と比べた場合にのみ見られることが確認された。次に,このような自己高揚的評価と関連する要因を検討したところ,記憶に対するポジティブな自己評価と認知症に対する態度,信念,社会的活動,趣味の活動などとの関係が顕著であった。 現在,得られたデータを用いて,コレスポンデンス分析や共分散構造分析などを行い,記憶の自己高揚的評価の発現に関するモデルを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究状況はおおむね,計画通りであると言える。 高齢者の記憶に対する自己評価を測定する際には,2つの側面に注意する必要があると考える。1つは,現在と過去の比較である,もう1つは自己と他者の比較である。これらそれぞれの側面について明らかにすることが可能な記憶能力の評価に関する質問紙を作成することが本年度の1つの課題であったが,調査可能な質問紙を作成することができたと言える。 また,当初の目的どおり,高齢者に対してその質問紙と記憶の自己評価に関係すると考えられる要因を含めた調査を行った。その結果,高齢者において,自己の記憶に対する自己高揚的評価に関係する要因を確認することができた。ただ,記憶の自己評価に関係する要因の抽出はできたものの,その要因どうしの関係性や影響力などについてはより詳細な関係を検討が必要であると考えられる。そのため,現在さらに多角的な分析を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在,平成24年度の調査で得られたデータを多角的に分析中であり,研究全体を円滑に進めていくためには,この結果を正確に把握することが最優先課題と認識している。そのため,平成25年度は, 平成24年度の調査で得られたデータを詳細に把握することを最初の目的とする。 その後,平成25年度の当初の研究目的であった「高齢者における記憶能力のモニタリングと記憶課題に関する検討」を実施していく予定である。この研究では,実際に様々な記憶課題を高齢者に提示することにより,課題により記憶の自己高揚的評価が見られるのか,記憶成績に対しても自己高揚的評価が見られるのかなどが明らかにできると考えられる。 このような研究成果は,平成24年度の知見と合わせて,広範囲な高齢者の記憶能力のモニタリングを理解へとつながるとともに,高齢者の生涯学習のサポートへの一助となるとも考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,調査と面接の両方を予定している。調査において,質問紙を作成するために文房具などが必要であり,印刷,複写費なども考慮している。また,面接調査においては,社会人として生活している高齢者の方の時間をいただくことから,研究協力費としての謝金を想定している。また,高齢者の方が研究に安全に協力していただくことを念頭におくため,面接控室に1人の調査補助員を配置する予定であり,その方への報酬も考えている。さらに,平成24年度と平成25年度の研究で得られた調査データを多角的に分析するために,分析ソフトであるSPSSの最新版の購入を予定している。そして,平成24年度の研究成果を発表するための学会参加費,旅費なども必要である。
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