井上(2013)では、幼児を対象に身体意識性と共感性との関連について検討を行った。そこで本研究では、児童を対象に、身体意識性と共感性の関連について検討を行うことを目的とした。対象者は小学2年生98名、4年生85名、6年生87名の計270名であった。身体感覚への意識化を促す課題として、本研究では肩の上げ下げ課題を集団形式で実施することとした。具体的には、一人での肩の上げ下げ課題を行った後、ペアを組み、一人が課題をする動作者、もう一人が動作者の動きを手伝う援助者に分かれて課題を行い、再度一人で課題を行うという流れで行った。これらの課題を通して身体感覚への意識化を促し、その体験について質問紙により尋ねることで身体意識性を捉えた。共感性についても、質問紙により回答を求めた。 その結果、4年生及び6年生において身体意識性と共感性との関連が見られた。4年生では、身体がスムーズに動く感じ、すっきりした感じといった弛緩感・爽快感に関して、高群よりも低群の方が、共感性に関する得点が高かった。また、身体のどこをどう動かしてよいか分かる、自分が動かしているという感じがするといった動作への気づきに関しても、高群より低群の方が、共感性に関する得点が高かった。一方、痛い感じや落ち着かない感じといった不快感については、高群の方が低群よりも共感性に関する得点が高かった。6年生においても4年生と類似した結果が見られた。 以上の結果から、身体感覚と共感性の関連について、快の身体感覚を強く体験できることよりも、肩の上げ下げ課題の遂行を通して体験される不快な感覚をも含めた身体のありのままの感覚を感じられることが、共感性と関連する可能性が示された。
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