研究課題/領域番号 |
24730548
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
中道 直子 日本女子体育大学, 体育学部, 講師 (10389926)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 幼児 / ふり遊び / シグナル |
研究概要 |
アメリカや日本の母親は,トドラー(1歳半児)の前でオヤツを本当に食べるときよりも食べる「ふり」をして見せるときに,頻繁に微笑し,トドラーの顔を長い時間注視し,効果音(米:非言語音,日:オノマトペ)を使う(Lillard & Witherington, 2004; Nakamichi, under review)。これらの行動は「ふりシグナル」と呼ばれ,認知能力の未熟な子どもに「これはふりだ」と教えるための行動である。本研究では,幼児期におけるふりシグナルの発達過程を検討することを通して,ヒトがいつから教育者になれるのかを明らかする1つの証拠を提供することを目的とする。 H24年度は,いつから幼児は,ふりシグナルを送ることによって,年下の弟妹がふりと現実を区別するのを助けることができるようになるのかを検討した。兄姉(4~6歳)が弟妹(1歳半~2歳)の前で,空の食器からおやつを食べるふりをしてみせる場面と,おやつの入った食器から実際におやつを食べてみせる場面を観察した。 ふりシグナルに限らず,マザリーズやmotioneseなどのシグナルの発達過程を調べた研究(中川・松村,2006)は大変少ない。このため本研究は,いつからどのようにしてヒトが教育者・養育者として重要なスキルを備えるようになるのかを明らかにするための1つの重要な証拠を提供するだろう。また,幼児が遊び相手の認知能力に合わせてふりシグナルを変化させることと,心の理論の関連は,ヒトがふりシグナルを送るようになるために必要な1つの基盤的能力について明らかにするものである。さらに,本研究は,ヒトだけが幼い頃から他者とふりを共有して楽しむことができる理由は,母親や年長の子どもが「ふりシグナル」によって,トドラーをふり遊びの世界へ導いているからであるという,ヒトという種におけるふり遊びの特殊性に関する示唆も与えてくれるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は,いつから幼児は,ふりシグナルを送ることによって,年下の弟妹がふりと現実を区別するのを助けることができるようになるのかを検討した。きょうだい41組を対象に,次の行動観察実験を行った。きょうだいを実験室に呼び,兄姉(4~6歳)に弟妹(1歳半~2歳)の前で,空の食器からおやつを食べるふりをしてみせること,またおやつの入った食器から実際におやつを食べてみせることを行わせた。被験者を集めることに苦労したため,実験中の行動の符号化および結果の分析までには至らなかったが,十分な量の観察データを得ることができたため,おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
第1に,H24年度で実施した観察データの分析を行う。行動を詳細に分析するため,これに数カ月を要とすると考えられる。第2に,幼児(4,5,6歳児)が,自分と同程度の認知能力を持つ仲間を遊び相手とするときのふりシグナルにおける発達過程を検討をする。そのために,同年齢児(4~6歳)のペアを実験室に呼び,1人の子どもが,もう1人の子どもの前で,空の食器からおやつを食べるふりをしてみせる場面と,おやつの入った食器から実際におやつを食べてみせる場面を観察し,2つの場面での行動の違いを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は実験中の子どもの行動の符号化および結果の分析までには至らなかったため,符号化を行う実験補助者に支払うはずであった謝金分が残ってしまった。よって,次年度へ繰り越す研究費は,この実験補助者への謝金として使用する予定である。なお,符号化を研究者本人が行わない理由は,実験者効果を防ぐためである。
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