研究課題/領域番号 |
24730549
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
杉本 英晴 中部大学, 人文学部, 助手 (20548242)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | キャリア・アダプタビリティ / 進路意思決定 / 不快情動 |
研究概要 |
本研究は,高等教育から職業社会への移行の困難さに自ら対応しながら進路選択を自律的に行うための進路意思決定モデルを構築し,自律的な進路意思決定につながる実践的プログラムの開発を行うものである。そのため,自律的にキャリアを選択するためのレディネス・対処力である「キャリア・アダプタビリティ」に注目し,その形成過程の解明とキャリア教育に援用可能な教材開発を行うことを目的としている。 3年間の研究期間の初年度にあたる平成24年度は,本研究目的を達成するための必要なツールの作成,整備を行った。具体的には,キャリア・アダプタビリティの尺度項目の作成を行った。調査の結果,関心・コントロール・好奇心・自信の4下位尺度からなるキャリア・アダプタビリティ尺度を作成した。 また,キャリア・アダプタビリティ形成過程における促進要因,阻害要因を抽出し,キャリア・アダプタビリティ形成過程で生じる不快情動についても確認した。自由記述による質問紙調査の結果,キャリア・アダプタビリティの阻害要因とそれに伴う感情として,段階ごとの違いが見受けられた。具体的には,関心が持てないのは将来に対する漠然とした不安,コントロールできないと思うのは自分自身のやりたいことがみつかっていないことによる焦り,好奇心が持てないのは希望の職種に就けないのではないかという諦め,自信がないのはこれまでの努力不足や自分の能力不足による無気力感があげられた。さらに,キャリア・アダプタビリティ形成過程の段階によって異なるサポートを希求していることが示唆された。 なお,キャリア・アダプタビリティ形成初期の将来に関心が持てず進路選択を回避する大学生について,調査結果の一部を平成24年度の日本心理学会第76回大会のワークショップにて話題提供による発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目的であったキャリア・アダプタビリティ尺度の作成と,キャリア・アダプタビリティ形成に伴う促進要因・阻害要因の抽出は,おおむね予定通り達成できたものと思われる。ただし,キャリア・アダプタビリティ尺度の一部の下位尺度において項目数が少なく信頼性が十分とはいえない。今後,本尺度をツールとして利用することを考えると,より高い信頼性と妥当性をふまえた尺度に改訂する必要があると思われる。 そこで,現在あらためて尺度項目を収集し,十分な信頼性と妥当性を有したキャリア・アダプタビリティ尺度を構成している。現在調査を行っている途中であり,平成25年度の前期には完成予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前期には,キャリア・アダプタビリティ尺度を改訂し,十分な信頼性・妥当性を有した尺度を作成する予定である。その尺度をもとに,平成24年度で調査が行われたキャリア・アダプタビリティ形成に関わる促進要因・阻害要因を同定するための質問紙調査を行う。また,学生だけでなく,キャリア教育・支援を専門とする大学教員とキャリアカウンセラーによる有効性の評定から一致率を算出し,学生の独力でのコントロール可能性,専門家からの教育可能性の2観点から有効性を確認する。この結果をもとに,平成25年度の後期までにキャリア教育・支援の専門家とともに,促進要因と阻害要因を含めた包括的なキャリア・アダプタビリティ形成モデルを構築する。 平成26年度には,2年間の研究をまとめ,自己診断式「キャリア・アダプタビリティ」形成フローチャート教材開発を目的とする。具体的には,大学生への面接調査をもとに,TEMによる分析を通した検討を行う。その上で,TEMによる複雑経路をフローチャート教材に援用する。この教材を作成するにあたり,大学生が自分自身の「キャリア・アダプタビリティ」形成段階を理解でき,「キャリア・タスク」を抱えている場合,その原因となる阻害要因を確認できること,さらに,現在の「キャリア・アダプタビリティ」をより形成するための促進要因を確認できることに留意した教材を作成していく。 なお,これらの研究成果は,日本教育心理学会や日本キャリア教育学会にて,学会発表や学会誌への投稿により行っていく。さらに,研究協力者には,研究成果公開パンフレットを最終年度に作成し配布するとともに,インターネットでも公開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
キャリア・アダプタビリティの測定尺度の精緻化のため,平成24年度に行う予定であった面接調査を延期した。そのため,人件費・謝金の支出が予定より少額となった。この平成24年度に予定していた面接調査に関する人件費・謝金は,平成25年度研究計画の予算と合わせて平成25年度後半の支出を予定している。
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