研究課題/領域番号 |
24730550
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
中道 圭人 静岡大学, 教育学部, 講師 (70454303)
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キーワード | 反事実 / 推論 / 幼児 / 認知発達 / 領域特殊 |
研究概要 |
平成25年度は,2つの実験を実施した。実験Iでは,反事実的思考とふり能力の関連を検討するため,3-5歳児47名に反事実課題とふり課題を実施した。反事実課題では,参加児に物語(例:庭の机の上に絵がある⇒強い風が吹く⇒絵が風に飛ばされ,木の上にのる)を話した後,反事実質問(例:風が吹かなかったら,絵はどこにあるか?)を尋ねた。ふり課題では,参加児にある行為(例:トンカチで釘を打つ)のふりをするよう求めた。その結果,3歳児(24.3%)より4歳児(56.3%)・5歳児(64.7%)で反事実課題の遂行が良いこと(カッコ内は正答率),反事実課題の遂行とふり課題の遂行は正の関連を持つことが示された。 実験IIでは,領域による反事実的思考の変化を検討するため,3-5歳児72名に物理領域および心理領域での反事実課題を実施した。各課題では,参加児に「初期状態⇒原因事象I⇒結果状態I⇒原因事象II⇒結果状態II」という構造の物語を話した。たとえば,物理領域には「机の上にコップがあった⇒積み木がコップに当たった⇒コップの取っ手が1つ取れた⇒コップが机から落ちた⇒コップの取っ手が2つとも取れた」,心理領域には「ケイコは菓子を持って,庭で花を見て,嬉しい気持ち⇒犬が花を踏んだ⇒ケイコは悲しい気持ち⇒ケイコはお菓子を落とした⇒ケイコはとても悲しい気持ち」といった内容の物語があった。それぞれの物語の後,「もし原因事象Iが異なっていたら,結果状態IIはどのようになっていたか?」という反事実質問を尋ねた。 実験IIでの予備的な分析の結果は以下の通りである(カッコ内は正答率)。1)全体的な遂行は,年少児(39.7%)より年長児(51.3%)で良かった。2)いずれの学年でも,課題の遂行は物理領域(20.0%)より心理領域(67.0%)で良かった。実験IIの結果は,反事実的思考の発達が領域によって異なるという本研究の主張を支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実験Iでは,反事実的思考とふり能力の関連が示された。ふり遊びは,幼児教育などで重要視されている活動である。これを踏まえると,反事実的思考とふり能力の関連は,幼児の反事実的思考を検討する有意義性を強めたといえる。 実験IIでは,これまでとは異なる課題構造を用いて,領域による幼児の反事実的思考の違いを検討した。その結果,異なる課題構造を用いた場合でも,本研究が想定したように領域による遂行の違いがみられた。これは,本研究の基本的な考えを支持する結果であり,この方向で研究を進めることの1つの証拠を提供したといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,「なぜ心理領域より物理領域で反事実的思考が困難になるのか」といった疑問に答えるような実験を行う予定である。また,これらの研究成果を国内外の学会や学術雑誌で公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった国外書籍を入手できなかったため(為替変化等による),当該助成金が生じた。 当該助成金は,翌年度分として請求した助成金とともに,購入予定の国外書籍の購入のために使用する予定である。
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