本研究は、幼児期における情動調整の発達的変化に保育者がどのような役割を果たしているかを明らかにするものである。アプローチ方法は、縦断的関与観察(対象と共にありながら観察を行う)とした。縦断的関与観察にした主な理由は、幼児期における日々のかかわりは、即座に効果が出るというよりも、数か月後や1、2年後に滲み出てくる場合が多いこと、情動をOn timeで捉えるにはその場を共にする者となる必要があることによる。 当初の実施計画では、年少から年長までの3年間を追い、最終年度は総合考察にあてる予定であったが、調査園の協力により、複数の進学先のうち、一定数の園児が進学するA小学校にて継続観察が叶うこととなったことから、最終年度はA小学校での追跡調査を行った。年度明けにA小学校への正式依頼を行って了承をいただいた後、進学児の保護者への正式依頼を行い、主に授業場面で8名の進学児の観察を行った。 4年間の調査を通じて得られた主な知見は、次の3点である。1)保育者は、積極的に子どもの情動を調整する「代行役」をする一方で、子ども自身が主となる情動調整のきっかけづくりをする「黒子役」もしながら、自律的な情動調整の発達を促している、2)1)のかかわりは、子どもの年齢や特性、保育者の子ども観や保育観によって異なる、3)小学校では、決まりや評価といった基準に照らし合わせる形で情動調整が求められる場面が増える。これらの知見は、情動調整の研究のみならず、幼小接続の研究にもつながるものである。 小学校での観察も含めた縦断的関与観察の結果については、本研究の後続として着手した幼小接続の研究でも引き続き発信したい。まずはPECERA2019(Pacific Early Childhood Education Research Association:環太平洋乳幼児教育学会)での発表を予定している(アクセプトされ、発表準備中)。
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