現在、様々な社会的なニーズを受け体系的なキャリア教育の推進が求められている。特に若者がそのキャリア選択においてどのような職業観や勤労観を持っているのか,また,それらをより成熟したものへと発達を促すためにはどのような教育的働きかけが効果的なのかを明らかにすることは,今後,効果的なキャリア教育活動を実現するための一助になると考えられる。 そこで本研究では、大学生の職業観についての素朴な認識について、自由記述によるテキストデータの分析により検討した。まず、堀・生田(2012)においては、大学生が自分が志望する職業の短所と長所をどのように認識しているかを検討した。その結果、大学生は希望する職種に応じて固有な評価観点を持ち、それぞれの職種に対するイメージを職業観として形成していることが示された。また、そのような評価観点には職種による違いだけでなく、職業に対する価値観の一つとしてのキャリア志向の程度や性別による違いがあることも見出された。 さらに堀(2014a)では、工学部大学生が持つ職業観を「働く理由」、「社会人と大学生の違い」についての自由記述による回答から得られたテキストデータの分析により検討した。その結果、自分のキャリアを自分で決めていこうという「自律性」の高い学生は「社会貢献」や「目的意識」といった観点から職業観を形成しているのに対して、「自律性」の低い学生では「人間関係」の要素がその職業観に大きく関係することが示唆された。 また、堀(2014b)では、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(中教審答申)や大学でのキャリア教育を論じた先行研究を概観し、検討した。その結果、(1)非正規雇用の増加など社会変化への対応、(2)求められる能力像の変化への対応、(3)現代の学生に必要不可欠なキャリア教育とは何かの明確化、の3点が中心的な課題として見出された。
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