研究課題/領域番号 |
24730558
|
研究機関 | 長崎純心大学 |
研究代表者 |
中村 真樹 長崎純心大学, 人文学部, 講師 (80531780)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム症 / 自己理解 / 情動機能 / 心理劇 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)における「情動機能と自己の発達」について、自閉スペクトラム症の児童・青年を対象とした心理劇的支援を通して検討することである。24年度から現在に至るまで、児童期(原則として月2回)及び青年期(集中訓練形式)の自閉スペクトラム症を対象とした心理劇的支援を継続して行い、データを収集している。平成26年度の実績は、以下のとおりである。
1.自他の情動の理解について 平成26年度に引き続き、児童については、異なる知的発達水準の2グループに対して心理劇を実施した。知的発達水準が高いグループにおいては、他者への感謝を感じた場面、心理的緊張を感じる場面等、より高度な次元の情動に焦点化した関わりを行った結果、自他の情動理解と表現が促進された。一方、知的発達水準が低いグループにおいては、心理劇において他者の役割をとることにより、役割を通した情動理解が促進された。青年においては、家族への感情や自分の現状への不安や希望等が表現された。以上より、知的発達水準や、ライフステージに応じて様々な情動に焦点化し、理解と表現を促進していくことが重要であることが示された。
2. 自己の発達について 質問紙(自己理解質問)、投影法(バウムテスト)を実施し、昨年度の結果との比較を行った。知的発達水準が低い児童に対して自己理解質問調査を行った結果、彼らの自己理解は自分の実際の行動や確実に起こる未来の出来事(進級等)に基づいており、自己の内面に注目することの難しさが見られた。投影法については、適応水準との関連を分析する必要性が示された一方で、自己理解の言語的側面については、知的発達水準との関連を分析する必要性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情動機能の発達、自己の発達の両面について、児童期及び青年期の自閉スペクトラム症を対象に継続的に心理劇的支援と調査を行い、データを蓄積することができている。児童については、知的発達水準によって情動機能と自己の発達がどのように異なるか検討することが可能である。さらに、自己の発達については、質問紙、投影法(自己理解質問、バウムテスト)の2種類の視点で検討することが可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
①情動機能の発達について 心理劇的支援のデータを引き続き蓄積しながら、児童については、個別療育計画における支援方針に沿って、年度を単位として対象児の変化を整理する。青年については、日常生活情報に基づき、心理劇において表現される情動表現について検討する。 ②自己の発達について 児童については、投影法、質問紙法という2種類の視点で調査を継続し、個人内の変化について比較検討する。変化の内容については、保護者から日常生活情報を収集する等必要な手続きを行う。 ③情動機能と自己の発達の関連について 複数年にわたる変化について、両者の関連、ライフステージにおける情動機能と自己の発達、事例研究という複数の視点を持って結果を整理し、自閉スペクトラム症児・者における支援の視点を示す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの機器購入により、物品費の使用を抑えることができた。また、26年度については、事例的研究を中心としてデータの分析を行ったために、人件費・謝金を使用しなかったが、次年度は使用の予定がある。
|
次年度使用額の使用計画 |
旅費については、国際学会への参加を予定しており、通常の調査旅行も26年度と同様に行う予定であるため、支出に占める割合が高くなる。人件費・謝金については、評定作業のため、物品費については、パソコン周辺機器(データ保存・バックアップ用)等の消耗品を購入予定である。文献資料取り寄せのために、印刷代、送料がかかる見込みである。FAXの送受信等の通信料、郵送料は、研究協力機関との連絡のために必要である。
|