研究概要 |
健常乳幼児(0~6カ月)のTRについて系統的な研究を行った。20組の健常乳幼児(0~6カ月)とその母親について実験を行うことができた。実験の手順として、以下の2種類の行動を交互に乳幼児の母親に行ってもらった。(1)椅子に腰掛けた状態で母親が乳幼児を抱っこする。(座って抱っこ)(2)歩いている状態で母親が乳幼児を抱っこする。(歩いて抱っこ)。そしてこの間の乳幼児の発声、泣き声、体の動きを、2台のビデオカメラと高品位マイクで記録録画した。また、乳幼児の心拍数をホルター心電図(EKG)記録装置を用いて観察した。 歩きながらの抱っこをしている状態の乳幼児のデータを集積し解析した。母親が立ち上がって歩き始めると、乳幼児の動きは顕著におとなしくなり(t, Student’s t test: t(11) = 5.21, p < 0.001)また泣きやんだ。(t(11) = 4.01, p < 0.001)さらに、乳幼児の心拍間隔が抱っこして歩き始めるとすぐに増大することが分かった。(increase (mean ± SEM) = 7.39% ± 0.04%, time constant = 3.16 s; corresponds to eight heartbeat counts; t(11) = 5.08, p < 0.01)その後、副交感神経の活動を見るために、rMSSD(隣り合った RR 間隔の差の二乗の平均値の平方根)を計算することにより心拍変動解析を行った。その結果、座って抱っこされているよりも歩いて抱っこされている方が明らかにrMSSDの値が高くなることが分かった。(t(12) = 2.07, p < .001)これらのデータにより、乳幼児は座って抱っこされているよりも歩いて抱っこされている時の方がよりリラックスしている状態にあることが行動学的だけでなく生理学的にも示唆された。
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