本年度は、幼児の実行機能の発達に注目し、課題中の眼球運動や瞳孔径の変化から検討した。従来研究では、3・4歳程度の幼児の実行機能の未熟さを明らかにするためにDimensional Change Card Sorting課題(以下DCCS課題)がしばしば用いられてきた。この課題では、カードの分類ルールを途中で変更することで、課題への柔軟な対応ができるかを測定している。ただし、この課題は、カード分類の成否を指標とし、5歳児以降では、ほぼ全ての幼児が正答することがわかっている。よって、DCCS課題では比較的年齢の高い幼児を対象に実行機能の連続的な発達を測定することができなかった。本研究では、眼球運動測定を伴うDCCS課題によって実行機能の連続的な発達の測定を試みた。その結果、テストカード提示から正しい分類先への注視移動までの時間を指標とすることで、ルールの変更に伴う処理負荷を推定するとともに、5歳から8歳までの幼児のルール変更に伴う負荷が段階的に減少することを明らかにした。したがって、今後、この課題と文理解課題を同一被験者に実施することで、実行機能と文理解の発達過程の相関関係を明らかにできると期待できる。 また、上記の研究と並行して、これまでに取得した話し言葉理解と読み理解の実験データを解析し、論文化を進めた。 現在、国内学会誌に審査中の論文があり、採択を得られるよう慎重に修正を進めている。また、それ以外に2本の論文を準備中であり、近日中に海外研究誌に投稿予定である。
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