本研究は児童養護施設における心理職による家族援助のモデル構築に関する研究であり,1.心理職の関わりがより有効な家族はどのような特徴を持つ家族であるかという援助対象に関する指針と,2.具体的にどのような心理的援助を行える可能性があるかという実践モデルの構築の2つが含まれるような援助実践モデルの構築を目的とした。本年度はこれまでの逐語データをカテゴリー化して整理・分析し,上記の2点から考察を行った。結果の概要としては,1.家族の特徴という点については,親や子どもの素質に関する複数の特徴とともに,児童相談所と施設の認識の差が大きい場合や,援助側のアセスメントがうまくいかない場合などがあげられた。次に,2.児童養護施設において心理職が家族援助を実施する際のモデルに関しては,次の3つの観点からまとめられた。(1)施設に家族支援を導入する際の工夫,(2)入所児童の家族との関係を構築し,継続的な支援を実施するための工夫,(3)具体的な援助実践の工夫である。まず施設への家族支援導入に際しては,心理職が以前に施設で子どもと関わった体験や異なる職場での子どもとの関与経験を背景に,主に入所児童が抱える家族への想いをくみ取ることが動機づけになっていることがわかった。次にそのような個人的体験を施設文化としてどのように位置づけるかという工夫が重ねられるのだが,そこでもっとも重要だと考えられていたのは事例のカンファレンスであることがわかった。また事例の検討と考察を行うことが,より現場で具体的に実践可能な家族支援のモデルの構築にも寄与することが示唆された。今後の課題としては,カンファレンスのあり方を工夫することが施設における家族援助の実施,有効性の向上に高く寄与することが明らかとなったことから,カンファレンスを中心とした,児童養護施設における家族支援に関する教育研修の必要性が挙げられた。
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