研究概要 |
不安や抑うつの強い人は,肯定的とも否定的ともとれるあいまいな出来事を否定的に解釈しがちな傾向にある。このような傾向を修正する方法の中で特に認知バイアスの修正に特化した方法に,「認知バイアス修正法(Cognitive Bias Modification:CBM)」がある。認知バイアス修正法には,注意バイアスと解釈バイアスを対象とした二種類がある。後者は「解釈バイアス修正法(CBM for Interpretation:以下CBM-I)」と呼ばれている(Mathews & Mackintosh,2000)。これは,コンピューターを介して,あいまいな刺激とその肯定的な解釈に繰り返しさらすことによって,解釈のバイアスを修正する方法である。 CBM-Iの効果は少数の研究により示されているが,まだ十分に検証されていないのが現状である。さらに,日本においてこの試みは用いられていない。そこで,CBM-Iの日本語版を開発し,その効果を検証することが本研究の目的である。 平成24年度は,まず日本心理学会第76回大会にてCBMに関するワークショップに参加した。その際に,注意バイアスに関するCBMを実践する研究者と情報交換をした結果,来年度の第32回心理臨床学会にてCBMに関するシンポジウムを共催することとなった。 また,本研究を実施するまでの準備として,オックスフォード大学(Lang, Blackwell, Harmer, Davison & Holmes,2012)から研究に利用する刺激文を,契約書を交わした上で譲り受けた。刺激文は,肯定的にも否定的にも解釈できる状況を提示したあとで,その肯定的な結果を提示する内容となっており,全部で448文ある。その中で対人不安に関連した文章を邦訳し,心理学を専攻する大学院生2名ともに表現や内容が日本での利用に適しているか検討した。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として,情報収集のための書籍および論文印刷代に41,000円,研究2,3での対象者募集のため,コピー用紙,Adobe Illustrator CS5 for Winアカデミック版,郵送費,文具,調査用紙などに65,000円,ウェブを介した介入実施のためウェブ調査作成サービスの利用費に50,000円,ウェブ調査画面確認用のAndroid端末に30,000円,デスクトップパソコンに142,000円使用する予定である。 人件費として,研究2,3の実施およびデータ処理補助に106,000円,イラスト作成費に106,000円使用する予定である。 旅費として,研究発表として第32回心理臨床学会,情報収集として第13回認知療法学会,第77回日本心理学会,The Evolution of Psychotherapy,2013にそれぞれ参加するため,260,000円使用する予定である。 その他として,通信費に30,000円,勉強会開催費として10,000円使用する予定である。
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