研究概要 |
本研究は不安や抑うつの要因となりうる解釈バイアスを修正する方法の一つである「解釈バイアス修正法(CBM for Interp retation:以下CBM-I)(Mathews & Mackintosh,2000)の日本語版を開発してその効果を検証することが主な目的である。CBM-Iとは,コンピューターを介して,あいまいな刺激とその肯定的な解釈に繰り返しさらすことによって,解釈のバイアスを修正する方法である。 平成25年度は,Lang, Blackwell, Harmer, Davison & Holmes(2012)の研究をもとに,対人不安場面に限定したCBM-I刺激文の日本語版を作成し,84名の大学生を対象に介入研究を行った。統制群(37名),介入群(37名)に分けて,介入群に対して携帯電話やスマートフォン,PCを介して一週間の介入課題を実施した。介入課題は,ネガティブにもポジティブにも解釈できるあいまいな状況を提示,その状況をイメージしてもらった後,ポジティブな解釈を結果を提示し,その場面をまた具体的にイメージするという内容であった。一日に14場面,一週間に合計98場面を提示した。一日一回,課題のURLを被験者にメールで送付し,毎日きちんと介入課題を行っているかどうかはweb上でチェックした。その結果,BDI-IIや解釈バイアスを測定する尺度などの各指標について介入群,統制群間に有意な差は見られなかった。しかし,統制群にも同じ介入課題を実施したのち,すべての被験者内で介入前後の得点を比較した結果,BDI-IIおよびネガティブな解釈バイアスの得点は有意に減少し,ポジティブなバイアスの得点は有意に増加しており,介入には一定の効果があった。本研究結果を,第32回心理臨床学会にてCBMに関するシンポジウム内にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,大学生を対象に介入研究を行い,その成果を日本心理臨床学会にて報告することを目的としていた。よって,概ね順調に進展していると考えられる。しかし,別の被験者を対象にしてイラスト付きの刺激文を用いて介入研究を行う予定であったが,学会にて発表した際の各方からの意見より,もう一度介入課題を精査する必要があると考え,実施にはいたらなかった。そこで,Evolution of psychotherapy 2013に参加し,認知行動療法に限らず,各心理療法の大家のワークショップなどに参加することで,介入課題改善のための示唆を得た。平成26年度は今年度の成果をもとに,新たな介入課題をより多くの大学生に対して実施し,その効果を検証する予定である。
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