本研究は、交際相手からの暴力(IPV)の新しい一形態である情報通信技術(ICT)を用いた暴力(I-IPV)の日本における実態とその特徴、交際相手への対面でのIPVとの関連を明らかにすることが目的であった。 本年度は,昨年度に作成した尺度を加害用に改訂し,I-IPV加害を測定する尺度を作成した。さらに,自己愛がI-IPVおよび対面でのIPV加害行為に及ぼす影響における調整要因(関係不安・交際相手に関する被害的思い込み)の効果を検討することを目的として,WEB調査を実施した。現在交際相手のいる15~29歳の男女で、交際相手が異性である501名を分析対象とした。分析の結果、関係不安が低い場合には自己愛は影響を及ぼさないが,関係不安が高くなると自己愛が一部のI-IPV加害行為を行う傾向を高めることが明らかとなった。対面でのIPVについては,概ね自己愛の直接の影響および関係不安との調整効果のどちらも見られなかった。交際相手に関する被害的思い込みについても,それが高い場合には自己愛が一部のI-IPV,対面でのIPV加害行為を行う傾向を高めることが明らかとなった。 本研究では,初年度はI-IPVの交際相手や元交際相手からの被害経験の有無に加え,行為の詳細,影響,対処の仕方について明らかにした。次年度にはI-IPV被害を測定する尺度を作成し,I-IPV、対面でのIPVともに被害経験のある人が交際相手との関係においてより被統制感を感じていることを示した。今年度は,I-IPV加害を測定する尺度を作成し,自己愛が関係不安や交際相手に関する被害的な思い込みが高まることによって一部のI-IPV加害行為を高めることを示した。以上より,研究期間全体を通してI-IPVの日本における実態とその特徴を明らかにした。
|