研究実績の概要 |
MCI(軽度認知障害)等, 記憶障害の兆しを捉える指標として国際的に流通するロジカルメモリ課題は杉下(2001)によって日本語版が提供されているが, その標準成績については74歳まで分が提供されているのみである. 75歳以上人口の増加に伴い, ロジカルメモリを75歳以上に実施する機会が増えている現状を踏まえ, 本研究では75歳以上の高齢者における日本語版ロジカルメモリの標準成績を調査している. 研究2年目にあたる25年度は東京地区の高齢者100名を対象にして調査を行った.エントリー後の辞退者が9名生じたため, 東京調査では最終的に91名分のデータを収集した.前年度の調査分と合わせて, 得られた178名分のデータを確認し, 種々の除外規準を踏まえ151名を分析対象として選出するところまでを行った.25年度には東京地区での調査を完了するとともに, 名古屋, 東京の両地区にて得られたデータを集約・解析するところまで行う予定であったが, 年度途中に研究代表者が産休・育児休暇による研究休止を余儀なくされたため, 続く26年度に遅延した計画分を行った.本研究では, 解析対象を75歳以上の後期高齢者に限定した場合もロジカルメモリの課題成績と年齢との間に負の相関関係が認められたことから, 70-74歳, 75-79歳, 80-84歳の層別に健常標準値を提供することを目指しているが, そのためにより高齢の層と受けた教育年数が短い層のサンプリングを強化する必要が確認された.そこで27年4月までに25名分のデータを追加収集し, 種々の除外規準を踏まえ14名を分析対象として採用している.また, 本研究によって作成されたデータベースを活用する試みとして, 認知機能健常と操作的に定義される高齢者群の抽出を行い, 運転技能に関する実験など, 高齢者を対象とした研究のリクルートに協力した.
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は不足する80-84歳層を充足すべく追加調査を継続するとともに, 成果の公表に向けて逐次, 解析を行って行く.より高齢の層と受けた教育年数が短い層について協力が得にくい結果となっているため, 新たな共同研究先を開拓するとともに, 標本数が確保できた層から先に情報提供することも考慮する.
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