研究課題/領域番号 |
24730579
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山内 星子 名古屋大学, 学生相談総合センター, 助教 (00608961)
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キーワード | プレッシャー / パフォーマンス / NIRS / 生理的指標 |
研究概要 |
本研究の目的は、プレッシャーが認知的・行動的パフォーマンスを抑制するメカニズムを検討することである。検討を行なうにあたり、本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いた前頭前野活動の測定を行う計画となっていた。しかし、研究課題提出後に発表された論文(Takahashi, et al., 2011)により、顔面領域の皮膚血流によって、NIRS信号が多大な影響を受けるという知見が発表された。この報告を受けて、平成24年度には、NIRS信号の妥当性を確認する実験1を行い、顔面血流によるNIRS信号への影響は、NIRS信号の妥当性が損なわれるほど大きなものとは言えないことが見出された。そのため、引き続き前頭前野活動の測定においてNIRSを使用することとした。ただし、今後の実験では、顔面血流を同時測定し、その影響を統制した上で結果を検討することとした。さらに、実験1に続き、あらかじめ予定されていた実験(以下、実験2)を実施した。実験2の目的は、プレッシャー条件下におけるパフォーマンスの抑制について、NIRS信号および自律神経系指標を用いた検討を行うことであった。プレッシャーの高条件(2名の実験者がその場でスピーチを聞いて評価する)、低条件(実験者がいない場所でスピーチする)の2条件を設定し、大学生21名を対象に実験を行った。 平成25年度は、実験1の結果の分析を詳細に行った。スピーチのパフォーマンスは、2名の大学院生によって、SPQ日本語版(Speech Perception Questionnaire;城月・笹川・野村,2010)を用いて評定され、数値化された。分析の結果、(1)プレッシャーがパフォーマンスを低下させる、(2)プレッシャーは、前頭前野活動の指標であるoxy-Hbの値を上昇させる一方、deoxy-Hbを減少させることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題提出後、本研究において重要な指標として用いるNIRSに対して、その妥当性を問う論文が発表された(Takahashi, et al.,2011)。そのため、研究を遂行するにあたって、まずはNIRS指標の妥当性を再確認する必要が生じ、実験を追加することとなった。これにより、研究計画に新たな作業が加わったものの、NIRS指標の一定の妥当性が確認され、当初の実験計画に沿って、実験、分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、気質・パーソナリティがパフォーマンス抑制に与える影響を検討するため、これまでプレッシャーの感受性に関連があるとされてきた不安、抑うつ傾向(市村,1965)、公的自己意識(金本・横沢,2003)など、複数の気質・パーソナリティ尺度について1000名程度を対象とした予備調査を行い、平均値から2SD以上の差がある回答者を対象として実験を行う。 また、これまでの研究の結果やRamirez & Beilock(2011)によって開発された介入法をベースに、プレッシャーによる影響を緩和する臨床的介入法を構成し、その効果を検証する。 今年度までの研究ではNIRSを用いた検討を行い、前頭前野の過剰な活性化が、プレッシャーによるパフォーマンスの抑制に関係していることを見出したが、近年、複数の研究において、前頭前野以外の脳領域(線条体、中脳腹側部など)がプレッシャーの影響を媒介することが指摘されている(Chib et al., 2012; Mobbs et al., 2009)。そこで今後の研究では、全脳の脳活動の測定が可能なfMRIの使用も視野に入れて検討を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度にNIRSの妥当性を検証するための実験を追加実施したことにより、当初計画の研究2および研究3の実施やその成果発表が最終年度にずれこんだため。 実験補助者への謝金に約20万円、実験参加者への謝礼に約20万円、英文校閲に約20万円、国際学会旅費に約20万円、その他消耗品や印刷費に約10万円の使用を見込んでいる。
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