研究課題
加害感とは「他者に不快感を与えている」と悩む症状である.単に悩むだけでなく、強い確信をもって他者に不快感を与えていると信じている場合、社会的機能が非常に阻害されることが知られているが、他者に不快感を与えているという認知が妄想的になってしまう心理学的メカニズムは実証的に明らかになっていない.そのため,治療・改善につなげるための基礎研究が必要である.平成25年度は主に次の2つの研究を行なった.1)前年度にSA-DOS日本語版(Sasaki,2009)を使用して、加害感を3つの次元から測定を行った.本年度はこのデータに基づいて、量的・質的データの更なる分析を行った.このうち、量的研究に関する成果は、平成26年度に日本国内の心理学の学会においてポスター発表を行なう予定である.2)関係付け的思考が妄想性に寄与していることが事例研究から予想されるが、その実態や治療を考える際,それが発達による一時的なものか,継続的な認知特性であるのかを踏まえる必要がある.関係付け的思考の傾向を測定するREF尺度(Lenzenweger et al., 1997)の日本語版を使用して、関係付け的思考傾向の発達的な推移を探索的に検討するための予備的データセットを確立した.現在分析中の知見と平成26年度に収集予定のデータから、結論を出す予定である.その他では、加害感と関連の深い自我漏洩感という症状に関して、認知・行動的要因に加えて文化的要因も視野にいれた論考をまとめ、Frontiers in Psychology誌の特集号「Contextual shaping of health and well-being: Contributions from cultural-clinical psychology」に掲載した.
2: おおむね順調に進展している
最終年度のデータ収集の参考のための予備的研究が予定通り進んでいるだけでなく、本研究の結果を国内学会の年次大会に報告する準備が整っている.
必要に応じて他の専門家からの専門的援助をうけつつ25年度に収集したデータの分析を終了させ、最終年度のデータ収集につなげたい.
本年度も家庭の都合によって当初予定の出張を行なうことが難しく,前年度からの繰越を消化するに至らなかったため、次年度使用額が発生した.次年度は最終年度であり、本研究課題の成果を学会等で発表予定であるのに加えて、研究データや文献等をまとめる作業や論文化する作業、他の専門家からの助言等を受ける予定である.
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