研究課題
加害感とは「他者に不快感を与えている」と事実に反して妄想的に悩む症状である.その妄想性によって患者の社会的機能が非常に阻害されるため,治療法につなげるための基礎研究が必要となる.妄想性をもつ患者には,他者の何気ないしぐさを自分に結びつける「関係付け的思考」が共通してみられることが指摘されていることから,本研究では,関係付け的思考が妄想的な加害感の生起に及ぼす影響を実証することを目的とする.平成26年度は主に次の2つの研究と発表を行った。1)関係付け的思考が妄想的な加害感の生起に及ぼす影響を実証するため、一般サンプル1000名を対象に,SA-DOS の頻度・確信度・苦痛度をはじめ,REF尺度日本語版と自己関係付け尺度(金子, 2000)等を実施した.現在、データを分析中である。2)日本心理学会第78回大会で研究代表者の研究室所属の大学院生と連名発表を行った。この研究では、SA-DOSの多次元アセスメントのデータを軸として、関係付け的思考以外の認知的特徴である、反すうやメタ認知が加害感の確信度を高めるかどうかを検討した。結果から、繰り返し考えること(反すう)が加害観念の体験頻度を増加させているものの、反すうが直接的に確信の度合いを強めているわけではないこと、また、加害観念をなんとか抑えなければならないと考えていたり、加害観念を統制できない、と捉えている人ほど確信度が強まっていることが明らかになった。現在、関係付け的思考とこれらの認知的特徴との関連性を検討しつつ、加害感の確信度がどのようにして高まるのか、総合的考察を行っている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Cross-Cultural Psychology
巻: 45 ページ: 1561-1578
10.1177/0022022114548483