研究課題/領域番号 |
24730581
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
野坂 祐子 大阪教育大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20379324)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 性暴力 |
研究概要 |
【研究内容】 研究1「性被害の実態調査と被害児への支援実践」については、トラウマ体験を有する児童生徒に対するTF-CBT(トラウマフォーカスト認知行動療法)の施行を目指し、使用する心理教育用教材等の開発を行った。また、児童福祉施設を対象に、被虐待等の体験のある中学生女子へのグループワークを行い、実施前後のトラウマ症状等を測定した。結果、心理教育やストレスマネジメントを中心とした短期間のグループワークでは、症状の自覚化が促され、その後のより専門的な介入へのベースとなりうることが考えられた。 研究2「性加害児への治療教育の実践と効果評価」については、主として性問題行動を有する生徒を対象とする、学校での健康教育の実践を行った。高等支援学校と公立高等学校の協力を得て、指導内容の検討や事例研究等を行い、その成果について報告書『思春期におけるさまざまな課題のある生徒への健康教育と生徒指導』にまとめ、全国の高等支援学校等へ配布し、研究成果の学校現場への還元に努めた。 研究3「性暴力に関する支援教育ツールの開発」については、家庭内のきょうだい間による性暴力について、その家庭の保護者へ子どもの理解と適切な対応について理解を促すための心理教育用リーフレットを作成した。研究協力者である児童福祉にかかわる支援者らとの共同開発であり、現在、複数の児童相談所等で活用されている。また広く研究成果を還元するために、webサイトでのダウンロードができるようにした。 【意義】いずれの研究も、幼児期および児童期に重複的トラウマを負った児童生徒を対象とした研究であり、対象者のケアや教育のあり方を検討することは、児童福祉の観点からも有意義であると考えられる。また、研究成果について、報告書や教材で公開し、教育現場等への還元を行っていることも意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画した3つの研究はそれぞれ課題を達成しており、来年度の取り組みにスムーズにつなげることができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究1については、トラウマ体験のある児童生徒へのTF-CBTの施行と効果評価を行う。すでに、実施において使用される教材等の準備はできており、臨床例を増やす予定である。また、グループワークの実践も継続し、これまでのデータとの比較等を行って見直しをすることで、最終年度でのプログラム開発につなげる。 研究2については、高等支援学校と公立高等学校での研究継続の許可を得ており、課題を抱えた生徒に対する支援教材の開発を続ける。昨年度に作成した授業案をふまえて、今年度は集団指導用の教材(パネル等)の作成を試みる。また、生徒指導の事例検討を継続し、被害体験や加害行為のある生徒に対する学校での対応について、より一般化した対応指針を作成する。 研究3については、これまでの研究で作成した保護者向けの教材に加え、施設職員等への心理教育ツールを開発する。トラウマ体験を有する児童生徒の生活支援を行う施設職員にとって、トラウマの理解や有効な対応に関する簡易な資料作成は、現場のニーズが高いためである。作成にあたっては、現場職員等へのヒアリングや意見交換等により、より実用性の高い資料とすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用は、主に、研究成果物の制作費と、国内外での資料収集および国際学会等での成果発表のための海外渡航費にあてる。
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