研究課題/領域番号 |
24730582
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (60352093)
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キーワード | HIV感染予防 / コンドーム / 羞恥感情 / 介入 |
研究概要 |
平成25年度に実施した研究は大きく2点あった。 まず1点目は【研究1:映像を用いたコンドーム購入時の羞恥感情低減プログラムの効果の検討】に関する追加調査である。研究代表者によるシングルケースデザインおよび無作為化比較試験による検討の結果,コンドーム購入時の羞恥感情を低め購入行動意図を高めるには(1)恥ずかしそうにコンドームを購入する人物,(2)堂々とコンドームを購入する人物のそれぞれの映像の提示が有効であること示されてきた。そこで本年は,介入から約1年後における映像提示の効果を検討した。成人男女424名を対象とした分析の結果,介入の1年後であってもビデオ視聴による効果が持続していることが明らかになった。特に,コンドーム購入の自己効力感の増加効果が顕著なものであった。なおこれらの研究成果の一部は,The 13th European Congress of Psychologyにて発表された。 また2点目として,【研究2:映像を用いたコンドーム使用時の羞恥感情低減プログラムの開発】の準備を行った。研究代表者のこれまでの研究によって,コンドーム使用時の羞恥感情は男性においては評価への懸念が,女性においては行動指針の不明瞭さが原因となって発生することが明らかになっている。さらにこれらの変数は,“愛情提示の失敗懸念”(愛していないと思われるのではないか)などの背景思考と関連することも示されてきた。そこで本年度は,心理学研究者3名を対象とした面接調査により,重要な背景思考の選出およびそれに対する反論思考の選出を行った。その結果,コンドーム使用を阻害するコンドーム使用時の背景思考の中で特に重要なものとして,「相手に嫌われてしまうのではないか」「セックスをつまらなくするのではないか」「自分は不慣れである」「使用・提案方法の不明瞭さ」の4点が選出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HIV感染予防にとって現実的かつ効果的な対策はコンドームの適切な使用である。本研究課題では,コンドームの適切な使用にとって重要な段階である「購入」と「使用」を阻害する主要な心理的要因である「羞恥感情」および羞恥感情の「認知的発生因」に注目した。そしてコンドーム購入時・使用時に生じる羞恥感情を低減させ,購入・使用を有効に促進させる介入プログラムの開発を目的としている。 本研究の最大の特徴は,①認知的発生因に介入することで,羞恥感情のみを低減するプログラムよりも効果が持続すること,②ウェブ上で参加できるプログラムを作成することで,講義等を利用して行うプログラムよりも適用範囲が圧倒的に広まることの2点である。 平成25年度には,当初の研究実施計画通り,【研究2:映像を用いたコンドーム使用時の羞恥感情低減プログラムの開発】の準備を行った。検討の結果,コンドーム使用を阻害する使用時における重要な背景思考として,「相手に嫌われてしまうのではないか」「セックスをつまらなくするのではないか」「自分は不慣れである」「使用・提案方法の不明瞭さ」の4点が示された。 また平成25年度には,【研究1:映像を用いたコンドーム購入時の羞恥感情低減プログラムの効果の検討】に関する追加調査も実施した。これは平成24年度までに明らかにされていた研究1の成果をさらに補強するものである。 これらのことから,現在まで予定していたデータの収集はいずれも達成し,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,【研究2:映像を用いたコンドーム使用時の羞恥感情低減プログラムの開発】およびその効果を検討する【研究3:映像を用いたコンドーム使用時の羞恥感情低減プログラムの効果の検討】を実施する予定である。 まずは,平成25年度までに明らかになった4点のコンドーム使用時における背景思考(「相手に嫌われてしまうのではないか」「セックスをつまらなくするのではないか」「自分は不慣れである」「使用・提案方法の不明瞭さ」)について,これらの背景思考に対してパートナーがどのように考えるのかを調査によって明らかにする。 その上で,コンドーム使用時の背景思考とそれに対するパートナーからの想定される反論をセットにして提示できるウェブプログラムを作成する。そして,そのプログラムの効果を無作為化比較試験によって検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定においては,平成25年度において【研究3:映像を用いたコンドーム使用時の羞恥感情低減プログラムの効果の検討】において使用するウェブプログラムを完成させる予定であった。しかしながら平成25年度における見積もり額では,ウェブプログラムの作成にかかる金額が予定を上回る規模となった。そのため,当初予定の作成費を次年度使用額とし,平成26年度の予算額と合算させてウェブプログラムの作成を行うこととした。 【研究3:映像を用いたコンドーム使用時の羞恥感情低減プログラムの効果の検討】において使用するウェブプログラムの作成費として使用する。コンドーム使用時の背景思考とそれに対するパートナーからの想定される反論をセットにして提示できるプログラムを予定しており,(1)パートナーから想定される反論に関する調査,および(2)プログラムの作成の両者に次年度使用額を充てる予定である。
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