研究課題/領域番号 |
24730584
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
佐々木 恵 鳴門教育大学, 予防教育科学センター, 准教授 (10416183)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 精神的不適応 / 予防 / 早期介入 |
研究概要 |
本研究は,精神的不適応の予防・早期介入における促進・阻害要因を明らかにし,アクセスしやすい専門的サービスのあり方について示唆を得ることを目的として行われている。 平成24年度は,一般大学生ならびに精神科医・臨床心理士・精神保健福祉士といった専門家とを対象として調査を行った。大学生における調査では,協力者138名中67名(48.5%)が,専門機関利用に「抵抗がある」と回答した。阻害要因(2点まで回答可能:全体の回答数は102)としては,「他人に相談したくない(恥ずかしい・不安)」ならびに「心に不調があると信じたくない・認めたくない」がいずれも10名と最も多く,次いで「そこまでする必要はない(大げさだ)」「相談しても改善するか分からない(改善しないと思う)」(9名),「他人の目が気になる」(8名)となった。一方,促進要因(2点まで回答可能:全体の回答数は72)として,「心の不調が深刻な時(このままでは生活に支障が出ると感じた時)」が13名と最多で,「周りの人(家族・友人)から勧められた時」(10名),「利用しやすい雰囲気がある」「家族や友人にも話せない時」「よく声をかけてくれる人・定期的に話をする人が相談相手の場合」(5名)と続いた。16名の専門家における調査では,大学生調査で挙げられたものの他に,阻害要因として「家族に専門機関利用を止められた(勧められなかった)」「本人または家族の精神障害や専門機関に対するイメージが良くない,偏見がある」「本人が障害(症状・問題)に気づいていない,困っていない」などが,促進要因として「本人や家族が症状(問題)や専門的サービスについての情報を持っている」「専門機関がインターネット,広告等で情報を提供している」「他の専門家からの紹介・連携」等も挙げられた。 これらの結果を踏まえて,平成25年度の調査研究の内容を吟味していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画においては,一般大学生を対象とする調査ならびに専門家を対象とする調査を予定どおり完了することができた。これらの一連の調査によって,精神的不適応の予防・早期介入における阻害要因・促進要因はある程度明らかになったところだが,今回の調査内容をより系統的・客観的に整理するために,テキスト・マイニングによる検討をさらに進める必要がある。その上で,平成25年度において実施予定の調査内容を吟味していく必要があるため,平成24年度の達成度としては「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては,平成24年度の調査で明らかとなった,専門的援助希求行動の促進・阻害要因に影響を与える諸要因について検討する。 ここで扱われる変数は,先行研究の知見をふまえ,年齢・性別・居住地域・大学での専攻などの人口統計学的変数,抑うつ症状,不安症状,ストレス・コーピング特性を予定しており,どのような特性を備えた人々に,どのような対応や情報提供が必要なのかを明らかにする。 一連の研究で得られた成果に関する資料は,臨床心理士や精神科医が所属する機関や,大学の学生相談機関等に配布し,日常の臨床活動に活用できるようにし,地域の実情にあった対応策について提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究課題終了年度となる平成25年度においては,予定している調査研究の遂行ならびに研究成果の公表のための経費を中心として研究費を使用する予定である。 物品費としては調査研究の遂行に必要なコピー用紙およびプリンターインク等の消耗品が必要である。旅費等については,国内学会(日本心理学会,日本行動医学会等),国際学会(ヨーロッパ精神医学会等)の参加により,成果発表や外部専門家との意見交換が必要なため,これらの費用を支出予定である。また,これらに加えて,得られた研究知見を英文学術論文にまとめる際の英文校正代や,研究協力者との連絡のための通信費等を支出予定である。
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