研究概要 |
平成24年度においては,一般大学生(n=138)ならびに専門家(n=16)を対象とした調査を行い,精神健康に関わる専門的援助を受ける際の促進要因・阻害要因となりうる要素を自由記述により抽出した。記述内容を整理した結果,それぞれ17項目が抽出された。 平成25年度においては,前年度に抽出された項目の表記に修正を加えた上で,一般大学生(n=266)を対象とした調査を行い,基本属性,精神健康度,日常のストレス・コーピング特性が,上記の要因とどのような関係にあるかを明らかにした。ロジスティック回帰分析により検討したところ,促進要因については「専門機関(病院や相談室など)に利用しやすい雰囲気がある時」専門家に相談しようと思える学生は,精神症状のカットオフ未満の学生と比べてカットオフ以上の学生で多くなった(Odds Ratio(OR)=2.65, p<0.05)。また,「自分を誰かに分かってもらいたい時」専門家に相談しようと思える学生は,専攻が文系の学生と比して理系の学生で少なく(OR=0.50, p<.05),日常的に情緒的サポート希求を求める傾向が弱い学生よりも強い学生で多くなる(OR=2.2, p<.05)ことが示された。阻害要因については複数の知見が見出されたが,ORの大きいものとしては,精神症状のカットオフ未満の学生はカットオフ以上の学生と比べて「まわりの人の目が気になる」人が多く(OR=3.00, p<.01),「どこに行けば良いのか分からない」は男性より女性で多く(OR=3.35, p<.01),日常的に問題解決によるコーピングを行う傾向が弱い学生よりも強い学生で少なくなる(OR=0.40, p<0.05)ことなどが示された。 今後はこれらの知見をもとに,精神的不適応の予防・早期介入のための情報発信・啓発を進めていくことが必要と考えられる。
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