本年度は、里親へのインタビュー調査を継続して実施した。また、これまでのインタビュー内容について分析し、里親と里子の生活のプロセス、そのプロセスであった実際の支援と、望んだ支援について、時系列での変化を中心に検討した。里親が抱える困難は震災からの時期や、子どもの発達によって変化をし、それに応じた支援が多方面から必要であることが明らかになった。里親と里子の関係性や家族構成によっても抱える課題が異なり、個別性に応じた支援が必要とされた。一方で、共通の傾向も認められた。震災後の支援は福祉領域からの支援が多く、臨床心理学的な支援はニーズがあってもマッチングがうまくいかないケースが多いようであった。これらの結果は、震災後の支援の評価という観点からも意義があると考えられる。また、今後の災害や事故等により里親になった者への支援に寄与するものと考えられる。 また、支援者のインタビュー調査を通して、支援者側の視点からの里親の課題とその解決への支援の実際、あるべき支援について検討した。分析の結果、効果的な支援システムの構築が必要であることが示唆された。 震災により里親となった者は、自らが里親になることを希望して研修を受けるなどのプロセスを経て里親になる者とは異なり、突然、心の準備もないまま里親となった。その多くは、親族だから子どもを引き取ることは当たり前という思いで里親になった。しかしながら、子どもと新しい家族を構築することは生易しいことではない。複数の方向から支援が提供されるシステムと、支援者が必要とされる。日本は自然災害が多い国であり、今後も災害がないとはいえない。また事件や事故で親族里親になる者もあると考えられる。里親への支援は、国の将来を担う子どもである里子への有効な支援となることは間違いなく、本研究の成果は個々の支援だけではなく、支援システムの構築にも寄与する意義深いものと考える。
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