研究課題/領域番号 |
24730586
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
本谷 亮 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20584189)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 行動医学 / 慢性疼痛 / 認知行動療法 / 脳機能 / 疼痛性障害 / QOL |
研究概要 |
平成24年度は、慢性疼痛患者に対する疼痛の症状維持モデルに基づく認知行動療法プログラムを開発した。具体的な手続きとしては、研究代表者が協力者として作成したマニュアル(『新・職場の腰痛対策マニュアル』(独立行政法人 労働者健康福祉機構))、および海外において慢性疼痛患者を対象とした心身医学的治療プログラム(例えば、Kerns et al., 2011; Otis, 2007; Woods et al., 2008)をもとに治療プログラムの内容を策定した。また、疼痛の維持や治療に関する研究と臨床の学術会議(例えば、運動器疼痛学会、慢性疼痛学会)に参加し、効果的な治療プログラム内容の精緻化、および運用方法の検討のために情報収集を行った。開発した治療プログラムは、隔週1回60分、全10回からなり、第1回から第3回は、教育セッション、第4回から第8回は、痛みに対する認知や感情に焦点をあてたセッションで、認知的再体制化やエクスポージャーを実施するものである。そして、第9回、第10回は再発予防セッションであり、アサーティブネストレーニング、アンガーマネジメントなどが行われる。 また、本年度は、開発した治療プログラムの中核的セッションが実際の患者に、理解され、有用なものであるかを検証するために、試験的に慢性疼痛患者9名を対象に実施した。内容は、教育セッションと痛みに対する認知や感情に焦点をあてたセッションからなり5セッション行った。その結果、治療プログラムに関する理解度と満足度は良好であり、実際に痛みに対する認知や感情に改善がみられるなど、治療プログラムの構成要素として妥当であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的である治療プログラムの開発を行うことができ、また、そのプログラムの有用性に関して、実際の慢性疼痛患者を対象に試験的に実施することで、検証を行った。その結果、患者の理解にあったものであり、臨床上においても効果が期待できる治療プログラムが整備できた。現在は、プログラムの本実施に向けて、事務的手順を整備しているほか、外来担当医への協力体制も整備するなど作業を進めているところであり、達成度としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度、26年度では、開発した治療プログラムを慢性疼痛患者に実施し、疼痛症状、痛みに対する認知(破局的思考)や感情(恐怖)、生活障害、および疼痛認知に関連した脳部位の脳血流量のそれぞれに関して、効果を検討する。効果検討では、短期的効果に加えて、フォローアップとして、プログラム終了3ヵ月後、6ヵ月後、1年後における効果を測定し、長期的効果としての介入効果の維持を明らかにする。 加えて、治療プログラムにおける予後良好者と不良者の特徴の解明を行うために、治療プログラム完遂者を予後が良好である者と不良者の2群に分け、両群間において心理学的側面と生物学的側面における特徴の相違点や治療反応性の予測要因を検討する。 また、これまで先行研究で報告されている慢性疼痛患者に対するさまざまな治療法の効果研究に関する文献を精査し、その治療効果を整理し、本研究で開発した治療法群と従来の治療法群との間で短期的効果と長期的効果を比較する。そして、最終的に算出される効果サイズに関して、対費用、対セッション、ドロップアウト率なども考慮し、総合検討し、開発した治療プログラムの社会的インパクト、および臨床応用可能性について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は主にプログラム開発に研究経費を使用したが、今年度以降は、治療プログラムの各セッションで使用するパンフレットの作成費、および効果検証で用いる質問紙にかかる費用が必要となる。 また、本研究は、医療施設を受診した患者の中から任意に参加を求めるため、研究参加にあたっては謝金を準備する。さらに、本研究では、研究期間に勤務し、臨床経験を有する心理士にも治療協力者としてプログラムに参加いただく予定であるため、調査や治療プログラムの実施、および資料整理にかかる研究協力者に対する謝金も支出する。 そして、研究成果は、治療者版、市民版のパンフレットを作成し、病院や公的機関に広く配布、公開する予定であり、そのパンフレット作成費用としても経費を使用する。
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