研究課題/領域番号 |
24730586
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
本谷 亮 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20584189)
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キーワード | 臨床心理学 / 行動医学 / 慢性疼痛 / 認知行動療法 / 脳機能 / 疼痛性障害 / QOL |
研究概要 |
平成25年度は、昨年度に続き、開発した疼痛の症状維持モデルに基づく認知行動療法プログラムの中核セッション(心理教育、リラクセーション、認知的再体制化、pacing、エクスポージャー)の有用性を検証するために、慢性疼痛患者を対象に治療プログラムを実施した。その結果、2年間で15名が参加し、回答に不備がなく、プログラムに継続参加した7名が分析対象となった。7名中5名で、疼痛強度、握力、および疼痛に対するコントロール感の改善がみられた。また、6名は、FFD(指床間距離)、PCS(痛みに対する破局的思考)、PASS-20(逃避・回避行動)、およびPDAS(疼痛に伴う生活障害)の得点がそれぞれ改善した。効果サイズを算出すると、疼痛に対するコントロール感が0.57で「中程度」、PCSとPASS-20がそれぞれ1.19、1.25で「大きい」結果であった。以上から、治療プログラムの中核セッションが痛みに対する不適切な認知や行動の修正に効果的であり、疼痛マネジメント力の向上や生活障害の減少に有用である可能性が示唆された。 また、本年度は、開発した治療プログラム(隔週1回60分、全10回)のフルパッケージを慢性疼痛患者に開始し、6名が参加中である。効果指標は、心理学的側面(疼痛症状、痛みに対する認知・行動、生活障害、抑うつ)と生物学的側面(NIRS:近赤外線スペクトロスコピー)で、6名全員が治療開始時点での測定を終了しており、疼痛症状の強さ、痛みに対する認知・行動変数や生活障害の悪化、および脳機能活動レベルの低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プログラムの中核セッションの有用性に関して、対象者を増やして数量的解析を行い、一定の効果を示唆できた。また、本年度の目的である治療プログラムのフルパッケージが開始され、6名の参加者を確保できた。治療プログラム運用上の事務的手続き、検査体制の整備、および外来担当医との連絡体制も整備が完了し、順次対象者を増やして、治療プログラムが進行している。今後、治療プログラム終了者のフォローアップも開始するところであり、達成度としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、平成25年度に引き続き、開発した治療プログラムを慢性疼痛患者に実施し、対象者を増やしてプログラムの効果を心理学的側面と生物学的側面から評価する。効果検討では、短期的効果に加えて、フォローアップとして、プログラム終了6ヵ月後、1年後における効果を測定し、長期的効果としての介入効果の維持を明らかにする。 加えて、治療プログラムにおける予後良好者と不良者の特徴の解明を行うとともに、治療反応性の予測要因を検討する。 また、本研究で開発した治療法群と従来の治療法群との間で効果サイズ、対費用、対セッション、ドロップアウト率などを考慮し、開発した治療プログラムの社会的インパクト、および臨床応用可能性について総合的に考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度予算内に、研究参加者への謝金を計上していたが、治療プログラムの参加登録を完了し、実際にプログラムを開始した参加者の多くは、平成25年度後半からであったため、謝金支出が平成26年度分となったため。 また、研究成果発表にかかる学会参加のための旅費、および論文投稿料、掲載料を計上していたが、パイロットスタディの研究成果が平成25年度前半にまとまり、学会発表、および論文投稿が平成26年度となったため。加えて、治療プログラムは現在実施中であり、最終的な研究成果の公表が平成26年度となる予定であるため。 研究参加者に対する謝金として支出する。 また、研究成果の公表として、国内外の学会における発表に必要な旅費、および論文投稿料、掲載料として支出する。 研究成果は、治療者版、市民版のパンフレットとしてまとめる予定であり、そのパンフレット作成費用としても使用する。
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