研究課題/領域番号 |
24730590
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
笹川 智子 目白大学, 人間学部, 講師 (20454077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社交不安障害 / 対人不安 / 注意バイアス / 表情刺激 / ドットプローブ課題 / 注意訓練 / 認知 / 予防 |
研究概要 |
近年,他者とうまくかかわることが困難であるために,学業や職務に支障をきたす若年層の問題が深刻化している。本研究では,人前での不安や緊張を主訴とする社交不安障害に対して,ネガティブな刺激に過剰な意識を向ける認知的傾向を改善するための注意訓練プログラムを実施し,疾患の予防効果を検証することを目的としている。 本年度は,プログラム作成のための基礎的研究として,プログラム中で使用予定の表情写真を用いたドットプローブ課題を実施した。大学生132名を対象に,プローブのネガティブ刺激に対する随伴率が50%の状態で実験を行った。対象者の社交不安と抑うつの程度を測定するため,短縮版Fear of Negative Evaluation Scale,Social Phobia Scale,Social Interaction Anxiety Scale,およびBeck Depression Inventoryを実施した。平均値+0.5SD以上の者を高群,平均値-0.5SD以下の者を低群とし,両群におけるネガティブ刺激とニュートラル刺激に対する反応時間の差を検討した。 分散分析の結果,感情価(ネガティブ・ニュートラル)と群(低群・高群)の主効果はいずれも有意であり,両者の交互作用も有意傾向を示した。その後の検定を行ったところ,いずれの尺度で測定した場合にも,社交不安高群は低群よりもネガティブ刺激に速く反応しており,感情価間の反応時間の落差が大きいことが示された。また,抑うつの高い者は低い者に比べて,感情価にかかわらず反応時間が長かった。 以上のことから,今回作成した課題で注意バイアスが生起すること,またプログラムの実施に当たっては抑うつ得点を考慮する必要があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の注意訓練プログラムの作成に向けて,ドットプローブ課題を用いた際の注意バイアスの生起が確認され,それぞれの表情刺激に関する脅威度の評定も得ることができた。また,プログラム構築のためのプラットフォームの作成やユーザーインターフェースの検討も行い,このまま表情刺激とプローブの随伴率を変更すれば実際のプログラムの運営ができる水準にまで達している。こうしたことから,研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
作成した注意訓練プログラムの効果検討を行う。大学生400名程度に対するスクリーニング調査を行い,社交不安の高い者に実験への参加を求める。同意の得られた者を実験群と統制群にランダムに割り付け,15分のセッションを8日間実施する。その後,実験群と統制群で社交不安の変化率に有意な差があったかを検証する。併せて,1カ月後,3カ月後,6カ月後に追跡調査を行い,訓練効果の長期的維持について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究成果を国内外の学会で発表するため,学会参加費と旅費を計上する。プログラムの実施に当たっては,80名程度の参加者に計8回の実験協力を依頼する必要があるため,実験参加者と補助者に謝金を支出する。さらに,プログラムの修正等を必要に応じて行うため,プログラミングの専門家への知識提供料も計上する。その他,論文の別刷代や質問紙の印刷代,通信運搬費等を支出する予定である。
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