研究課題/領域番号 |
24730590
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
笹川 智子 目白大学, 人間学部, 専任講師 (20454077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 注意訓練 / 社交不安障害 / 対人不安 / ドットプローブ課題 / 表情刺激 |
研究実績の概要 |
近年,他者とうまくかかわることが困難であるために,学業や職務に支障をきたす若年層の問題が深刻化している。本研究では,人前での不安や緊張を主訴とする社交不安障害に対して,ネガティブな刺激に過剰な意識を向ける認知的傾向を改善するための注意訓練プログラムを実施し,疾患の予防効果を検証することを目的としている。 本年度は,前年度に実施したプログラム参加者の3か月・6か月フォローアップデータの収集を行った。プログラムではニュートラルな顔刺激と,ネガティブな顔刺激を用いたドットプローブ課題を実施した。対象者を介入群(ニュートラル刺激へのプローブ随伴率100%)と統制群(プローブ随伴率50%)にランダムに割り付け,Fear of Negative Evaluation Scale(FNE)短縮版,Social Phobia Scale(SPS),およびSocial Interaction Anxiety Scale(SIAS)を用いて,訓練前後とフォローアップ期の社交不安得点の推移を測定した。その結果,FNE短縮版において,群と時期の交互作用が有意傾向を示し,介入群においてのみ,社交不安得点が減少することが示された。SPS,SIASにおいては時期の主効果が有意であり,介入群・統制群のどちらにおいても,時間の経過とともに社交不安得点が下がっていた。このことから,プログラムには一定の効果が示唆されるものの,具体的なパフォーマンス場面や対人交流場面における不安にはプローブ随伴率が影響していなかった。今後はサンプル数を増やすことで検定力を十分にあげ,再度プログラムの効果を詳細に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の休職に伴い,年度途中で研究を中断せざるを得なかったため,前年度までにプログラムを終了した者のフォローアップデータの収集に注力し,新たな実験の開始は延期した。6か月フォローアップに関しては,時期的に実験室内での実施が困難であったため,郵送調査の形式に変更した。1年間の産前産後休暇および育児休業を経て,実験を再開し,プログラムの継続的な実施と効果検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,社交不安の高い大学生のスクリーニング調査を行い,より多くの実験参加者を確保することに尽力する。同意の得られた者を実験群と統制群にランダムに割り付け,8週間のプログラムを実施し,その前後で効果検討を行う。主観指標だけでなく,スピーチ場面のビデオの分析を行い,行動的な変化についても記述する。訓練終了後の3ヶ月,6ヶ月のフォローアップデータを収集し,訓練効果の長期的維持について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の産前産後休暇および育児休業の取得に伴い,補助事業期間を延長したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を学会で発表するため,学会参加費と旅費を計上する。プログラムの実施に当たっては,追加で20名程度の参加者に計8回の実験協力を依頼する必要があるため,実験参加者と実験補助者に謝金を支出する。ビデオデータの解析を行うため,解析補助者にも謝金を支出する。その他,論文の別刷代や質問紙の印刷代,通信運搬費等を支出する予定である。
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