近年の精神障害を取り巻く社会状況を受けて,本研究の目的は,統合失調症患者を対象に,認知機能改善療法を実施し,その効果について検証を行うことである。 これまでの研究期間において,退院後の社会生活を目指す入院患者を対象として,神経心理学的検査バッテリーを用いた認知機能障害の測定および,認知機能障害の改善に有効と考えられる一定の手続きに基づく認知機能改善のためのアプローチを開発,実施してきた。それに加えて,対象群として非介入の統合失調症患者および健常研究協力者についても,同様の神経心理学的検査バッテリー等を用いた評価を実施してきた。 本年においては,認知機能改善のための介入実施を継続して行うとともに,その効果の検証についての検討を行った。具体的には,週1回,12週(約3ヶ月)の期間で,記憶機能,注意機能,実行機能をターゲットとした支援プログラムを行った統合失調症群について,ターゲットとなった領域を含む神経心理学的検査バッテリー,精神症状,社会機能,認知機能についての患者自身の評価,脳機能画像(fMRI)の指標を用いて,その改善および変化について検証を行った。 また,神経心理学的検査バッテリーについては,健常対照群および非介入の統合失調症群との比較を行い,脳機能画像においては介入群と健常対象群との比較を行った。 本研究で用いた,統合失調症の情報処理機能を改善するための認知機能改善療法についてはその効果が確認されたことから,具体的手続きや評価の方法等について学会や雑誌等においても報告を行った。
|