本年度は過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome)に対する認知行動療法プログラムの構成内容を立案し、その長期的予後を検討した。 これまでの研究成果から、過敏性腸症候群の症状に対しての注意が高まること、あるいは、過敏性腸症候群の症状に対する直接的な解消を意図することによって、腹部の不快感などの自覚症状が高まり、結果として過敏性腸症候群症状が悪化することが示唆されている。本研究における治療プログラムではこれらの結果に基づき、注意コントロール訓練をプログラム内容に付け加えた。先行研究や既存の治療プログラムにおいてはストレス場面やストレス感情全般における気晴らしや気そらし、リラクセーションなどが導入されているものの、過敏性腸症候群の症状自体に対する注意コントロールに言及したものは少ない。注意コントロールは社交不安障害においては自己注目を強化する機能とされており、同様の悪影響が過敏性腸症候群においても生じている可能性がある。したがって本技法を治療プログラムに導入したことは、過敏性腸症候群治療における新たな試みと考えられ、今後はその実用性と効果の検証が求められる。 その他、本研究成果によって明らかになった心理的特性へ介入するプログラム内容、先行研究のプログラム内容を包括的に検討し、本研究の認知行動療法プログラムも構成されている。 プログラムの効果は治療前後だけでなく、半年後時点においてもその効果が維持されていた。
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