研究課題/領域番号 |
24730598
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | ルーテル学院大学 |
研究代表者 |
植松 晃子 ルーテル学院大学, 総合人間学部, 講師 (90614694)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 民族アイデンティティ / 自我アイデンティティ / 異文化適応感 / 異文化接触 |
研究概要 |
本年は民族性の探求や愛着・肯定感を実感するきっかけとなった出来事についての情報を収集し,両要因をより構造的に把握し,新たな尺度作成のための検討要因を決定することを目的として調査を実施した。 調査協力者は、日本人留学生11名(男性4名、女性7名、うち女性2名は縦断調査)、留学先は全員アメリカであった。協力者の留学期間は4か月~5年7か月であった。 調査内容は、①民族性の探索・愛着に関する自由記述と、②自我アイデンティティ尺度(谷, 1990)、③異文化適応感尺度(植松, 2004)と、④民族アイデンティティ尺度(植松, 2010)である。 縦断調査は現在最終調査を行っているため、質問紙調査についての調査結果のうち主なものをまとめる。まず留学前の民族的な劣等感の有無にかかわらず、言語的な問題を契機に民族的劣等感を抱きやすいことが示された。言語は異文化不適応感に強く影響するものであり、両者の関連について改めて確認するとともに、民族アイデンティティと自我アイデンティティのあり方にも影響することが示唆された。また日本人であるという民族性には対象者全員が愛着を持っていたが、探索意欲は全員ではなかった。この理由として留学後の探索意欲に結びつくのは、留学後の愛着のポジティブな変化であると示唆された。つまり愛着が高くても留学前から変化しない場合には、探索意欲は高まらない可能性がある。また民族性に関するネガティブな経験の有無にかかわらず愛着・肯定感は高く変化するようである。 8年以上の長期留学生は4年目から滞在国も日本もバランスよく見て自分の思考が働くようになったと回答している。異文化における民族アイデンティティと自我アイデンティティの安定をみるためには長期的な調査が必要があると推察できた。 異文化適応感と両アイデンティティの関連について、より力動的な仮説を検討する必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は、調査協力先のやむを得ない事情で中止されたこともあり、予想より調査人数が集まらなかった。そのため、調査項目でできるだけ自由記述を増やし、また縦断調査も実施することで、研究目的を補うよう努力を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後、調査依頼についてはできるだけ多くの大学や留学斡旋先へのアプローチを含め、量的な縦断調査ができるように、努力していく予定である。 また研究1は研究2以降の予備調査的位置づけである。よってこの不足分を補うために、帰国子女や留学経験者へのインタビューやアンケートを行うことを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究2:縦断調査によって仮説モデルである民族アイデンティティと自我アイデンティティの関連の変化プロセスを明らかにしながら、研究1によって明らかになった多角的な構造をもとに,愛着・探索の変化プロセスについても明らかにする 調査参加者:日本人留学生(欧米圏400名(男女各200名)計400名) 調査期間:留学前,留学後(直後,留学後半年,留学後1年) 調査方法:研究1と同様
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