本研究の目的は、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)児・者と、児童の場合、その親を対象とした自己理解プログラムの開発と検討を行うことである。平成27年度は、青年期・成人期のASD者を対象に、自己理解支援に関するニーズ調査とグループワークによる自己理解プログラムの開発と実施、検討を主に行った。 プログラムは全8回、各回に1つのテーマを設けて実施した。テーマは、事前の調査によりニーズの高さが確認されたコミュニケーション(話し方や聴き方、アサーションなど)、感情の理解とコントロールなどについてであった。ASD者は、客観的かつ直感的に自己を捉えにくい特性を持つことから、知的に枠組みを提供する心理教育、視覚的に理解しやすいワークシートを用いた個人ワーク、体験から気づきを得やすいようにロールプレイや話し合いの活動を導入し、自己理解を促す工夫をした。期間中に2グループ実施し、参加者のうち研究協力の同意が得られた16名が分析対象となった。 プログラム実施前に、ニーズの調査(参加動機、現在困っていること、期待すること・学びたいテーマ)と対応の留意点等を確認するため、自由記述式のアンケート調査と個別面談を行った。プログラム実施後は、プログラム全体の振り返りと効果の確認を行うため、自由記述項目(参加してよかったこと、有益だった内容、自己に対する新たな発見、日常生活への活用)とチェックリスト(自己理解や新たな学び、実施形式、満足度、参加時の感情など16項目、各4件法)で構成されるアンケート調査と個別面談を行った。また、プログラム実施前後にWHOSUBIを実施し、精神的健康度の変化を検討した。事後調査の分析から、自己のポジティブな面の発見と評価、具体的な目標の発見、自己理解による具体的な人間関係や自己管理の改善など、プログラムの効果が確認された。
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