研究実績の概要 |
本研究は、健康で豊かな社会の構築に資するため、飲酒や喫煙など直近ならびに将来的な健康リスクを有する健康リスクテイキング行動のメカニズムを解明することを目的としている。具体的には、刺激希求、自己制御能力、社会規範が健康リスクテイキング行動に対して個々に直接的に与える影響、ならびに、それらの要因の相互作用に着目した実証的研究を行うものである。平成27年度は、平成26年度に承認された期間延長を利用し、平成26年度に実施予定であった研究を継続して遂行した。標本の年齢ならびに性別の偏りを補正するために行ったWEB調査の結果からは、刺激希求、自己制御能力、社会規範が健康リスクテイキング行動に与える影響は、年齢、性別により異なることが認められた。特に、わが国でそれらの摂取に関して法律的な年齢制限を有する喫煙と飲酒については、弱年齢であるほど刺激希求、自己制御能力、社会規範がリスクテイキング行動に強い影響を与えることが明らかになった。また、弱年齢層では特に社会規範の影響が強く、友人関係が飲酒や喫煙を開始もしくはその使用を促進している可能性が示唆された。さらに、縦断研究の実施に向けて、簡便な刺激希求尺度の作成を行った。欧米で広く使用されているBrief Sensation Seeking Scale(Hoyle et al, 2002)の翻訳許可を取得して調査を実施した。大学生を対象とした調査からは、日本語版Brief Sensation Seeking Scaleが元尺度と同様に頑健な一因子構造を持ち、かつ、十分な信頼性と妥当性を有する尺度であることが明らかになった。
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