研究課題/領域番号 |
24730609
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大対 香奈子 近畿大学, 社会学部, 講師 (80509927)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 学校適応 / 心理アセスメント |
研究概要 |
本研究の目的は、小学校入学後に学校適応に困難を示す「小1プロブレム」と称される社会的問題を予防すべく、小学校就学時の適応に関わる要因を明らかにする実証的なアセスメント研究を行うことであった。 小学校入学に伴う環境変化は子どもにとって非常に大きく、就学時は不登校などの学校不適応を起こすリスクが高い時期だといえる。これは、東京都教育委員会が平成22年度に実施した調査により都内の小学校1308校のうち、小1プロブレムと呼ばれる状態が報告された学校は18.2%におよび、発生時期が4~5月に集中していると報告されていることからも裏付けられている。また、小1プロブレムが起きた学校のうち56.7%は11月時点でも収まっていないと回答していたことから、一度不適応の問題が生じると解決は難しく、その後長期的な不適応の状態に陥る可能性が高いことが示唆されている。したがって、小学校入学に伴う学校不適応を予防することは、その後に継続しうる長期にわたる不登校等の学校不適応の予防にもつながるという意味で、非常に重要な課題である。 小1プロブレムは社会的な問題としても非常に大きな注目を集めており、政策としての対応は進められつつあるが、小1プロブレムの実態や小学校入学時のふて校に関わる要因についてはまだ十分な研究が行われていないのが現状である(森岡・岩元, 2011)。本研究では、行動分析学の視点から小学校入学時の不適応に関わる個人要因と環境要因を同定することを平成24年度に計画し、自治体で行われた調査結果および先行研究の資料などをもとに要因の項目を挙げる作業を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度は、自治体で行われた調査結果や専攻研究の資料をもとに、小1プロブレムの実態把握と、学校不適応に関わる個人要因および環境要因を挙げ、それをもとにチェックリストの原案を作ることを計画していた。また、そのチェックリストの原案を幼稚園や保育所の年長児を担当する教員ならびに小学校1年生を担任している教員に提示し、要因項目の妥当性についての評定を行ってもらうことを計画していた。しかし、研究者が9月より出産のため産休に入り、研究は計画通りには遂行できず、自治体での調査資料や関連する先行研究の資料収集までにとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、本研究の目的として以下の2点を挙げていた。目的1は就学時の学校適応に関わる子どもの行動特徴を含む個人要因および、幼稚園・保育所と小学校との環境の違いに注目し、学校適応に関わる環境要因を明らかにすることであった。目的2は、就学時の学校適応に関わる要因についてのチェックリストを作成し、就学前の子供に対する予防的介入や就学後の適応促進を目指した介入に役立てられるかを検討することであった。 特に目的2を達成するための方法として、実際に就学前の幼児に対して原案のチェックリストを実施し、就学後に追跡を行って適応状態の確認を行うとともに、チェックリストの有効性を検討することを計画していたが、そのような事例検討を行うことは時間的な制約上困難であると判断したため、計画内容を一部変更することとする。 今後の研究遂行目標としては、学校適応に関わる個人要因および環境要因の項目を挙げたチェックリストの原案を作成し、その項目について幼稚園・保育所の教員と小学校教員に評定を実施してもらい項目の妥当性について検討を行うこととする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究は幼稚園・保育所および小学校をフィールドとしたアセスメント研究のため、小学校入学時の適応に関わるチェックリスト原案の評定を教員にお願いするために幼稚園・保育所・小学校に出向く必要がある。可能であればその場で子どもの様子を観察させてもらい、研究者自身も数名の子どもについてそのチェックリストを使って評定を行ってみることも考えているため、現地に出向く出張費を計上した。また、作成したチェックリストを印刷し配布するための印刷費、研究成果を発表・公開するための学会参加費、またチェックリストはホームページの中で公開し、教育現場での使用を可能にすることや利用した人からフィードバックをもらえるシステムを作成するための費用も計上する計画である。
|